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白点三千個[5]
白点病克服に向けた提案

(2005.12.31)

 

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一時的な病魚の“治療”ではなく、白点病を完全に克服するために、
いくつかの提案をします。

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感染水槽からの白点虫(の卵)駆除方法の提案
  さて、病魚の方の“治療”方法は、これまでもあれこれと考えられて来たのですが、このサイトで再三主張しているように、白点病の克服のために最も大切なことは、病魚の体から白点虫を取り去ることではなく、水槽内に残っている白点虫の仔虫や卵(シスト)を、いかに取り除くか。ということになるのではないかと、私は考えています。このうち、白点仔虫の方は卵(シスト)から遊出後、短い時間内に感染力を失うことが確認されていますので、無視しても構いません(寄生される魚さえいなければ、放っておいてもすぐに死んじゃいますから。笑)。
それよりも問題は、下手をすると休眠して何ヶ月間(場合によっては1年以上?)も、生存を続ける卵(シスト)の除去方法ということになるでしょう。

しかし私は、浅学にして、この「水槽内に残った卵(シスト)の効果的な駆除方法」について述べた海水魚飼育サイトを、ほとんど見たことがありません。そこで白点バージンにも関わらず(^_^;;、大胆にも(笑)、これまで集めた情報から考えた、私なりの卵(シスト)の駆除方法を提案しようと思います。それは以下の作業を順番に、全て行うことです。

  ただし、再三書いていますように、私には白点病治療の実体験がありません。それどころか、白点病に罹患した魚すら、ろくに観察したことがありません。そのため、ここで提案する方法もどの程度まで実効性があるものか、全く分かりません。全く間違っている可能性もないではありませんから(だったら書くな!という話ではありますが(^_^;;)、実際の水槽での採用に当たっては、十分に慎重な検討のうえで、自己責任での採用をお願いします。
結果については、私は責任を負いませんよ(^_^;;(爆死)。
       
    1. 水槽の大掃除
       
      さて、まず最初にすべきと思われるのは、水槽全体の大掃除です。濾材、底砂はもちろん、水槽のガラス面や濾過槽の壁面、配管ホース内等、大掃除できる場所は出来るだけ丁寧に大掃除をしましょう。その際、濾材や底砂を除いては、水道水で徹底的に洗います。これには浸透圧の作用によって、ガラス面、ホース内などに付着した白点虫の卵(シスト)を破壊する効果を期待します。(可能であれば熱湯消毒も検討の範囲内です。)

さらに、濾材、底砂については、一度水槽から取り出してザルの上などにあげ、空気に晒してしまいましょう。もちろん、水道水を掛けるわけには行きませんが(濾過バクテリアまで死んでしまいます。)、一度空気に晒すことによって白点虫の卵(シスト)に刺激を与え、仔虫の産出を促します。白点仔虫が産出するということは、一時的には白点病感染のリスクが高まるということですが、仔虫が遊出た時に水槽内に魚がいなければ、いくら沢山の白点仔虫が生まれても関係ありません。むしろ卵(シスト=耐性卵)の形のまま、いつまでも残っていることの方が、よほど始末に負えないのですから、ここではむしろ積極的に卵(シスト)が成長できる環境を作り出して、さっさと卵(シスト)を孵してしまうことを狙います。

なお、同じ意味で、水槽内の無脊椎動物やLR等も、一度水槽から取り出して、可能な限り空気に晒してしまうのが良いと思います。長時間空気に晒すことは無脊椎動物の調子を落とす可能性もありますので、慎重に行う必要はありますが、短時間であれば大きな問題にはならないでしょう。それよりも無脊椎動物やLRを移動させることによって、少しでも貧酸素な領域(=卵が休眠できるエリア)を狭めておくことが大切だと、私は考えます。
(ただしもちろん、エビ等のように活発に呼吸する無脊椎動物を空気中に晒す時間は出来るだけ短くすべきですよ。そうでないと窒息しちゃいますからね(^_^;;)

まずは大掃除によって出来るだけ多くの卵(シスト)を破壊し、次には水槽内の貧酸素領域を崩壊させることによって酸素供給を行い、卵(シスト)の素早い成長→速やかな仔虫の遊出を促す環境を作ることが、最初の作業になります。
       
    2. 高水温のキープ
       
      大掃除が終わって、水槽を再セッティングしたら、今度は少し高めの水温をキープするのが良いのではないかと思います。これもやはり、白点虫(の卵)の成長を促進して、出来るだけ早くその生活サイクルを回しきってしまうことが目的です。低水温ではいつまで経っても卵(シスト)は仔虫を放出せず、水槽内で生き残ります。逆に高水温で高酸素な環境では、比較的短い期間(3〜6日程度)の間に、卵(シスト)内部の細胞分裂が終了し、仔虫を産出してしまいますから、水槽内の無脊椎動物が耐えられる範囲内で、高水温をキープすることが有効と思われます。

本当は30℃と言いたいところですが、それではイソギンチャクなどが参ってしまいますので、ギリギリ、27〜28℃くらいをキープすることを目指しましょうか(笑)。
       
    3. 魚のいない状態での“空回し”継続
       
      そして大切なことは、水槽を再セッティングした後、その水槽に魚を入れないまま、一定期間、水槽をいわば“空回し”することです。その間、無脊椎動物は魚がいる時と同じように、通常飼育を続けます。また濾過槽内や底砂内部のバクテリアの繁殖促進のためにも、魚がいた時と同レベルの給餌は続けましょう。(水槽を立ち上げるときの給餌と同じコンセプトですね。)

その“空回し”の期間は一応、1ヶ月間程度と考えておけば良いのではないかと思います。白点虫の卵(シスト)も、休眠に入ってしまったものがいない限りは、通常の飼育水温(25℃程度)の場合でも、1ヶ月間の間には、ほとんど全ての仔虫の産出を終えるはずですし、1ヶ月待つ間には、大掃除によってダメージを受けた水槽システムの濾過能力も、再び大掃除前のレベルに近く、復活していることが期待できます。また例えば病魚に低比重法による“治療”を行う場合には、最低4週間〜6週間程度、低比重環境下での飼育が推奨されていますから、その期間の間中、元の水槽を“空回し”しておくと考えても良いかもしれませんね。

ただし、条件が許すのであれば更に長期間、出来れば3ヶ月〜半年程度も、水槽を“空回し”出来れば、その方が理想的であることは間違いありません。3ヶ月“空回し”が出来駆るのでしたら、その間にもう一度くらい、大掃除をすることも可能かと思います。とにかく、敵は本能寺にあり…。じゃなくて(^_^;;、水槽の中にあり。ということです。白点病を克服するためには、むしろ「魚なんかどうでも良い。とにかく水槽から白点虫を駆除するんだ!」と、そのことに情熱を注いで下さい。

なお、この間、魚の方は当然のことですが、白点虫フリーの環境の別水槽で隔離飼育しておきます。魚にとっては頻繁に水槽を交換するのもストレスの原因になりますから、最初から隔離期間を1ヶ月以上に想定しておいて、隔離(治療)水槽にもある程度の設備を整え、治療の終了後も継続して隔離水槽で飼育し、十分に体力を回復させてから本水槽に戻す。と考えてはいかがでしょうか。

以上が、私が提案する感染水槽からの白点虫(の卵)駆除方法です。もちろん、こうすれば必ず、感染水槽からの白点虫(の卵)を駆除出来るというものではありませんし、また(私は支持しませんが)、「白点虫は魚類以外からも栄養補給して生存することが可能なのではないか」という説を唱える方もいます。もしそうであれば、一度白点病が蔓延した水槽から白点虫を駆除することは永遠に不可能だと言うことになると思いますが、それでも少なくとも、私の提案に従って、水槽の大掃除をし、その後も魚を入れないまま1ヶ月の間、水槽を“空回し”しておけば、水槽内に残存する白点虫(卵、および仔虫)の数を大幅に減少させることが出来るはずです。そこに別水槽でしっかりと体内から白点虫を駆虫し、体力も回復させ、免疫力も高まった魚を戻せば、今度は再び生き残った白点虫に再寄生される危険性は極めて低くなっていることでしょう。

白点病の克服とはくれぐれも、病魚の体から白点虫を取り去ることではありません。病魚が再び白点虫に感染されることがない水槽環境を作り上げるということなのです。その点をしっかり、認識していただきたいと思います。

再感染予防のために
  さて、以上、白点病の“治療”の考え方と、感染水槽からの白点虫(の卵)駆除方法を検討すれば、白点病の再発予防策については語り尽くしたも同然なのですが、最後に改めて、とりあえずは白点病の蔓延を克服できたとして、次なる再発予防のポイントをまとめておきましょう。
       
    1. 飼育環境の安定的な維持に全力を注ぎましょう
       
      やはり基本は、この、飼育環境の安定につきます。無闇に新しい魚を追加したり、レイアウトを変えたり、水槽の中に手を入れたり、必要のない大量換水をしたり、あるいは温度変化に鈍感であったり…。そうしたことが全て、飼育環境の安定を損ない、白点病再発リスクを高めます。水槽システムの濾過能力をじっくりと熟成し、最小限にしてかつ十分な、つまり適切な水槽メンテナンスを行うことによって、飼育環境の安定を図り、白点病の発生(再発)リスクを下げましょう。

また時には、水槽システムの濾過能力そのものが、飼育生体と釣り合っていない場合もあります(つまり、生体の大きさや量に対して水槽が小さく、濾過能力も低い。など)。そのような場合にはそもそも、白点病に限らす、あらゆるトラブルのリスクが高いわけですから、白点病以外にも様々な病気等が続発して環境が安定しないような水槽では、まず水槽システム全体、飼育スタイル全体の見直しから始めましょう。
(実はそういう、「白点病以前」の問題を抱えている水槽も多いと思うんですけどねぇ…(^_^;;)
       
    2. 白点病“治療”終了後、1ヶ月間は新しい魚の導入は控えましょう
       
      この理由は既にご理解いただけるものと思います。白点病の発生&表面的な終息後も、少なくとも1ヶ月間は、水槽システム内に活性を維持している卵(シスト)が残っている可能性が高く、つまりは白点病リスクが極めて高い状態にあります。そのような水槽内に新しい魚を入れることは、自宅水槽で白点病の感染実験を行うことと代わりません。

これは白点虫のライフサイクルさえ理解していれば明白なことなんですが、「新しい魚が全て白点病になってしまう。」と嘆いている人に限って、この点を理解していなくて、魚が死んだ翌週に新しい別の魚を入れたりするんですよねぇ…(^_^;;。

そんなことをしても喜ぶのは魚が売れた海水魚ショップだけです。新しい魚を購入するために使ったお金は、あなた自身にとっても無駄金ですし、それで殺される魚もかわいそうです。心当たりのある人は、さっそく行いを改めましょうね。
       
    3. 新しい魚を入れる再には、十分なトリートメント(検疫)を行いましょう
       
      新規の魚を水槽に入れる際に、十分なトリートメント(検疫)が必要な理由も、既に説明しています。白点虫の生活/増殖サイクルを考えると、新規導入魚のトリートメントは、1〜3日程度では不十分でしょう。実際に「白点」が現れるまでに3日間程度罹ることもあるわけですから、十分に慎重にトリートメントをおこなうとしたら、白点虫の生活/増殖サイクルが2回りする程度、すなわち、10日間から2週間程度の検疫期間を設けたいものです。

早く本水槽に入れたい気持ちも分からないではありませんが、特に白点病に罹りやすいチョウチョウウオやフグの仲間などは、ショップの水槽から自宅の水槽への馴致期間であり、また餌付け期間として、10日間から2週間以上のトリートメントを行うことにしてはどうでしょうか。そこでしっかり餌付けを行い、自宅環境での生活リズムを整えることが出来れば、きっと本水槽に導入する際にも、他魚との混泳などのストレスに耐えることが出来るようになるのでしょう。
       
    4. 普段から、予防措置を採りましょう
       
      治療法に関する考察」でも触れていますが、殺菌灯/殺菌筒(殺菌樹脂)などは、“治療”方法としてより、予防法としてポピュラーです。また、ラクトフェリン入りの餌なども、普段から与えて何の問題もありませんので、予防法としても使い勝手の良いものだと思います。

これら、副作用のない(もしくは少ない)予防措置は、積極的に採用することで、少しでも白点病の再発リスクを減らしていけば良いと思います。
       
    5. 再感染を前提とした飼育環境整備も検討しましょう
       
      さて、上記のような様々な対策を施しても、やはり白点病の再感染を防ぐのが極めて難しい場合があります。新しい魚を次々と購入するような飼育スタイルは論外ですが(^_^;;、特にチョウチョウウオやハコフグなどを飼育する場合には、例えばスズメダイなどを飼育する場合に比べて、白点病感染リスクは桁違いに高いものになります。そのような魚種を飼育する場合には、最初から白点病の再感染が起きることを前提として、水槽システムや飼育環境を整えることも考えてはいかがでしょうか。

具体的には、白点病発生時に直ちに硫酸銅の投薬や低比重法を採用できるよう、最初からライブロックを含む無脊椎動物を水槽に入れず、魚だけで飼育することです。白点虫の卵(シスト)が隠れやすいという点では、底砂を敷かないという選択肢もあります。(もちろん、魚の隠れ場所として、飾りサンゴなどを入れることは必要ですが。)
魚だけで飼育するのであれば、還元濾過を組み込む必要も少ないので、水槽システム内に貧酸素な環境を作らないように心がけ、NO3の蓄積に関しては頻繁な換水やあるいは吸着剤の使用などによって対応すれば良いでしょう。

私個人としては、ただ単に魚を飼うだけではなく、ライブロックなどを含んだ海の生態系(に出来る限り近いもの)を水槽内に取り入れようとするところに海水魚飼育の面白みを感じていますので、ベアタンクにチョウチョやハコフグだけが泳ぐ水槽を目指すことはないと思いますが、広く海水魚飼育の方法論としては、そうした方向性もひとつ、十分に採用されて良い方向性なのではないかと思います。
現在はとにかく、無闇にライブロックを水槽の中に入れるのが“流行”のような部分がありますが、LRはやはり一つの生き物です。しかも、水槽にとって良い部分も悪い部分も持つ、その上、正体不明の生き物であるのです。LRを水槽に入れるということはすなわち、予測不可能なリスクを導入するということでもあるのですから、チョウチョウやハコフグなど、最初から白点病のリスクが高い魚を飼育する際には、他のリスク要因は遠ざけておくというのは、正しい判断の一つだと思います。
(ま、この問題は目指す飼育スタイルと深い関連が出てきますので、誰にでも当てはめて良いものではないとは思いますが…。ただ、やはり海水魚飼育において、「あれもやりたい。これもやりたい。」は禁物。何かを得るためには、別の何かを諦めることも必要なのだとは思います。要はその優先順位をどこに置くか。なんですけどね(^_^;;)。

以上が、白点病の再感染予防のための飼育方法の提案です。
しかし、ちょっと冷静に考えてみると、実はそんなに特殊なことはなくて、通常より少し慎重に、丁寧に、飼育をしようということだけなんですけどね(^_^;;。

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