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海底三百ミリメートル・実践編 [1]
水槽のコンセプト

 

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今回の水槽のコンセプトは、
「初心者でもなるべく失敗しない小型海水魚水槽」です。

海水魚の飼育では本来、水槽が大きければ大きいほど、
失敗の可能性が下がりますから、
初心者が初めて海水魚を飼うと言うのなら、
本当は横幅90cm以上の、大型(中型)水槽で始めたいところです。

しかし初心者は最初はそんなに大きな水槽でしか、
海水魚を飼えないと言うのでは(その方が楽ですが、)
海水魚飼育はあまりにもハードルが高い趣味になってしまうのではないでしょうか。

そこで今回は、多少無理があることは十分に承知しながら、
イニシャルコストもランニングコストも安く、
メンテナンスも簡単な小型水槽を使いながら、
しかも小型水槽ならではのデメリットを減らすことで、
人(のお財布?)にも飼育生体にも優しい海水魚水槽を目指すことにします。

※ただし、本当はもっと大きな水槽で始めることが望ましいのはいうまでもありません。
ここで紹介するのは、
小さな水槽でも努力と工夫があれば、ここまで出来る(ハズ)、
という極端な例ですから、
これをスタンダードと思わないで下さい。
 お金とスペースの許す範囲で、必ず、
出来るだけ大きな水槽で始めることをお願いします。

 

◇ ◆ ◇ 成功するためのポイント ◇ ◆ ◇

小型水槽で海水魚を始めて失敗しないためには、
いくつかのポイントがあります。

(1) 水質変化を最小限に抑えるために
 
  高い濾過能力を持つ底面濾過を濾過システムの中心に置きながら、水質悪化を緩和する還元濾過系も導入します。
   
(2) 水温変化を最小限に抑えるために
 
  これは水槽自体と言うよりも設置場所の工夫で、家の中で一番寒い場所に水槽を設置します。
水温が低い場合にはヒーターで簡単に暖められますが、水温が高い水槽を冷やすのはとても大変だからです。
さらに、水温上昇に繋がるパワーヘッドや水中式ポンプを使わず、外部濾過装置を使うことで、夏場の温度上昇を最低限に抑えます。
   
(3) 縄張り争いを出来るだけ避けるために
 
  初めから、縄張り争いをしない生体同士の組み合わせにします。飼育する生体の数も最小限です。
しかも一番丈夫で、環境変化にも比較的強い魚、かつ、いかにも海水魚らしくて人気の高い魚=カクレクマノミのペアとイソギンチャクの飼育に挑戦します。

カクレクマノミは成長しても5〜6センチにしかならないですし、いつもイソギンチャクの回りにいて、泳ぎ回らないので、狭い水槽でも飼うことが出来ます。
さらに、自然の海でも干潮には干上がってしまうような場所にも生息していますので、深場に住む魚に比べると、温度や塩分濃度など、水質の変化にも強いと言えます。

一方、イソギンチャクは本来、水質に敏感な生物ですので、本当はこのような小さな水槽で飼育するのには向いていません。できればもっと大きな水槽で飼育したいところですが、ただ、丈夫な種類を選んで飼えば、30cm水槽でも、飼えないことはありません。
そこで今回は、イソギンチャクの中でも特に丈夫な「サンゴイソギンチャク」「タマイタダキイソギンチャク」「LT(ロングテンタクル)アネモネ」のいずれかを、飼育する事にします。

   
  なお、ここに記載した小型の水槽で飼育できるのは、このように、小型で、泳ぎ回らない種類の魚
 (=ハゼ、ゴンベ、ネズッポ、ネンブツダイの仲間など)を少数(2〜3匹)に限定されます。
もっと大きくなる魚(フグなど)や泳ぎまわる魚(ヤッコなど)、群れで飼う魚(ハナダイなど) を飼いたいと思う方は、最初から最低90cm以上の水槽で始めて下さい。
「幼魚のウチは大丈夫」とか「水槽に合わせるから大きくならない」など、 ショップの店員は言うかもしれませんが、大抵は間違っています。
2〜3ヶ月の間なら、店員の言う通り、狭い水槽でも飼えるかもしれませんが、
半年程度の間には、必ず、魚を殺すか、大きな水槽に買い替えるか、 どちらかになるでしょう。
ショップにしてみればその方が売上が上がるのですから、ショップにしてみればそのような薦め方をしたくなるものですが、我々は飼育者は、最初から、出来るだけ長く、健康に、魚を飼育できる環境を整えるべきです。
   
(4) 病気予防のために
 
  本当は「紫外線殺菌灯」などを使いたいところですが、値段も高いですし、何より水温上昇が避けられません。
そこでまずは魚の免疫力を高める餌を与えることと、「紫外線殺菌灯」と同じような効果が期待出来ると言われている「ヨウ素殺菌ペレット」とを使用することにします。

免疫力を高める餌は「メディフィッシュ(日本動物薬品)」です。哺乳動物の初乳に多量に含まれる「ラクトフェリン」という成分が配合されています。
「メディフィッシュ」は淡水魚用の餌ですが、海水魚用の餌と混ぜて与えれば、栄養面でも全く問題ありません。水に浮くので残餌が出にくく、使い易い飼料だと思います。

一方、「ヨウ素殺菌ペレット」は「アクア工房}」や「ニッソー」、「翠水」といったメーカー(販売店)から、各種の商品が販売されています。殺菌効果を持つ「ヨウ素」が配合されたペレット(直径5mmくらいの玉)が、、接触した雑菌を殺すことになっています。
(ただし実際に使用するのは水槽セットしてから1ヶ月後程度からです。)

いずれもどの程度の効果を持つものか、私自身では実証できていませんが、(我が家には、もともと病気の魚がいないため)理論上、効果があるはずの商品です。
たとえ無効力であっても、とりあえず「毒」にはなりません。
「無害」と言いながら実は「有害」な薬品が氾濫している海水魚飼育用具市場では、確実に無害なことだけでも、十分、価値があると思います。

なお、飼育魚がクマノミなどであれば、もともと丈夫な魚ですから、「殺菌ペレット」などの使用はなくても、十分飼えるだろうとも思っています。

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