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海底三百ミリメートル・実践編 [5]
生体の導入

 

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水槽をセットしてから1ヶ月、試薬で亜硝酸が検出されなくなったら、
いよいよ生体を水槽内に導入します。
ここにも手順がありますので、説明します。

 

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【 ステップ 1 】

◇ ◆ ◇ 「ヨウ素殺菌ペレット」のセット ◇ ◆ ◇

  • 自分で製作する手順を掲載しましたので、こちら→をご覧下さい。

  • なお、最近、アクア工房というメーカーから、「外掛け式フィルター専用・ヨウ素殺菌マット」という商品が発売になったそうです。外掛けフィルターに使用可能なヨウ素殺菌用製品ですので、その商品を購入し、使用されても良いと思います。

 

【 ステップ 2 】

◇ ◆ ◇ 生体導入準備ためのの水換え ◇ ◆ ◇

  • 1ヶ月間、濾過バクテリアを育てた水槽の水は、見た目は変わらなくても、微量成分の濃度やphなど、様々な成分が新しい海水とは変化しています。別にそのままでも魚が飼えないことはないのですが、せっかく新しい生体を導入するのですから、この際、飼育水も新しくしておきましょう。

  • ホース等を使って、水槽から飼育水を汲み出し、減った分、新しい海水を補充します。
    既に生体が入っている水槽の場合には、換水と言っても水槽水量の1/5とか、1/4くらい、最大でも1/2以下に抑えた方が良い(緊急時以外)と思いますが、今は生体が入っていませんので、特にこだわらなくても良いでしょう。適当に、8割、9割程度、換えてしまいましょう。(全換水でもかまいません。)

  • ただしこの時はちゃんと、事前に溶かした海水を使ってください。
    水槽セッティングの時のように、真水を入れた後に人工海水を溶かす方法では、折角殖やした濾過バクテリアが死んでしまいます。濾過バクテリアも生き物ですから、出来るだけ急激な環境の変化は避けた方が良いのです。

  • なお、水道水を使った人工海水ですと、換水したあとまた「茶ゴケ」が出ますが、あきらめて下さい。この「茶ゴケ」はむしろ出ないと困るくらいのものです。

  • この換水は、生体を導入する1〜2日前にしておきます。生体導入当日ですとやはり水質が安定しませんから、最悪、前日までには済ませておいて下さい。
    当日に行ったからといって、それだけで魚が死んでしまうことは無いとは思いますが、やはりなるべく良い環境で魚を導入してあげてください。

 

【 ステップ 3 】

◇ ◆ ◇ 生体の購入とお店からの搬入 ◇ ◆ ◇

  • お店での生体の選び方については別途解説しますので、そちらを見て下さい。
    今回はカクレクマノミのペアの飼育を目指しますので、出来れば出来るだけ小さな(幼い)生体を2匹、選ぶと良いと思います。
    逆に大きな生体を2匹では、両方ともメス同士で、喧嘩になる可能性が大です。殺し合いになりますから、そのような生体は避けて下さい。

  • またイソギンチャクを入れる場合には、出来ればクマノミより先に、1週間くらい前から、イソギンチャクだけを先行して水槽に入れた方が、良い結果が残せるかもしれません。
    イソギンチャクの状態が悪い時には、クマノミに共生されることが却って、イソギンチャクにとってストレスになると思われるからです。
    イソギンチャクはクマノミがなくても全く平気です。本当は却って邪魔なんじゃないかと思うくらいです。
    クマノミが先に居て、そこにイソギンを入れると、イソギンにしてみれば、水槽にも慣れないわ、同居人にも慣れないわ、で、大変なストレスになるのです。

  • お店で生体を購入した後は、
      1.なるべくショックを与えない
      2.温度変化は最小限に
      3.輸送時間は出来るだけ短く
    ということに気を付けて、自宅へと丁重にお迎えします。
    特に夏場の自動車の中などは直射日光が当ったりするとたちまち、温度が上がってしまいますので、輸送途中で死んでしまいます。
    出来れば発泡スチロールのクーラーボックスなどを持っていって、生体の入った袋をその中に入れて運ぶのが理想でしょう。

 

【 ステップ 4 】

◇ ◆ ◇ 温度合わせ ◇ ◆ ◇

  • 生体を自宅に運んできたら、まずは温度合わせです。
    ショップの水槽の水温と、自宅水槽の水温は違いますから、そのまま魚を入れたら、温度ショックで死んでしまいます。その温度を合わせる作業を「温度合わせ」と言います。

  • 温度合わせの具体的な方法としては、購入してきた生体は、たいてい、酸素パックされてビニール袋に入っていると思いますので、その袋のまま水槽に浮かべ、30分程度放置します。
    それだけですが、その間に徐々に、袋の中の水と水槽の水の温度が同じになります。

  • なお、この時には水槽の証明は消しておいてください。照明が点灯していると、水面の浮かべた袋の中の温度が上がってしまい、温度合わせになりません。

  • また場合によっては、袋のままで浮かべるのではなく、あらかじめ小型のプラケース等に移して、そのプラケースを水槽に浮かべておく方法でも構いません。

 

【 ステップ 5 】

◇ ◆ ◇ 水合わせ ◇ ◆ ◇

  • 温度合わせが終わっても、まだ生体を水槽に入れてはいけません。袋の中の水(=ショップの水)と、自宅の水槽の水とでは、塩分濃度やph等の水質が違っているからです。この違いを無視して、いきなり生体を水槽に入れると、特にエビの類などはショック(phショック等)を起こして、死んでしまいます。
  • そのショックを和らげるために、水質を徐々に調整して行くことを「水合わせ」と言います。以下、その手順を説明します。
(1) 酸素パックされた袋を開け、生体を袋の中の水ごと、小型(1Lくらい?)のプラケースやボウルなどに入れ、水槽の水に浮かべます。
 

(2) プラケースから1/5程度の水(1Lのプラケースなら200ccくらい)を捨て、その捨てた分、水槽の水をプラケースの中に注ぎ込みます。これで1/5の水が入れ替わったことになります。
 

(3) その後、5分〜30分程度、新しい水に生体が慣れるまで、放置します。
この時間は生体の種類によって調整します。エビなどの水質の変化に敏感な魚の場合は長く、スズメダイ等の丈夫な魚の場合は、数分でも大丈夫です。
 

(4) 5〜30分程度の後、今度はプラケースの1/4程度の水を捨て、また水槽の水を補充します。
先ほどは1/5、今度は1/4で、合わせると最初の水の4割が交換されたことになります。
 

(5) (3).と同じ様に放置した後、次には1/3、その次は1/2と、徐々に捨てる水の割合を増やしていくと、その度にほぼ、元の袋の水の2割ずつを換水することになります。
 

(6) 1/2の段階の後、5〜30分、放置したら、いよいよ生体を水槽に入れます。
この時は網や素手などで生体を掬い取って、生体だけを水槽に入れるようにします。
この時だけでなく、水合わせの作業全般を通じて、元の袋の水はなるべく、水槽に入れないように気をつけて下さい。お店の海水には必ず、何らかの病原菌が混じっています。さもなくば、その病原菌を殺すための薬が入っているか、どちらかですので、どちらにしても、我々がこれから魚を長期間、飼育する水槽の中に入れるのには、好ましくありません。
   
  • 以上、水合わせの作業は全行程で、どんなに短いものでも30分くらい、エビなどなら1〜2時間くらいの時間を掛けて行ってください。途中TVを見たり、本を読んだりしながら、のんびりやれば良いと思います。
  • もし、水合わせ行程中の酸欠などが心配であれば、プラケースにエアレーションを掛けても構いませんが、1〜2時間のことであれば、そこまで神経質にならなくても大丈夫ではないでしょうか。
  • あとエビやハゼなどは水合わせ中のプラケースから飛び出してしまうことがあります。水合わせの最中はなるべくショックを与えないようにすると共に、プラケースにフタをしておくなど、対策を取っておけば万全です。

 

【 ステップ 6 】

◇ ◆ ◇ 水槽導入後 ◇ ◆ ◇

  • 生体を水槽に導入した後は、生体が慣れるまで、なるべくそっとしておきます。
    水槽の照明を点灯するのは翌日からにして下さい。
    餌を上げるのも、翌日以降にします。

  • 神経質な生体の場合には、2〜3日、姿を現さなかったり、餌を食べなかったりするかもしれません。その場合にも心配だからと言って、あまり頻繁に水槽を覗き込んだりしていると 却って逆効果です。元気な生体なら、1週間程度の絶食は平気ですから、気長にやりましょう。

  • 水槽に魚を導入した翌日からは、朝、いつも通りの時間に水槽の照明を点灯し、しばらくして魚が完全に目覚めたら、少量の餌を与えてみます。クマノミの場合、状態の良い生体なら、まず問題なく、餌を食べるでしょう。すぐには食べないこともありますが、諦めずに、また焦らずに、魚が落ち着き、水槽に慣れるのを待って下さい。

 

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以上が終われば、
ようやく本格的に海水魚飼育のスタートです。

「実践編[6]その後の日常管理」を参考にしながら、
小さなマリンアクアリウムをお楽しみください。

 

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