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海底三百ミリメートル・実践編 [8]番外編
「偽デニ弁当」での還元濾過

2004.02.11UP/2008.03.01部分修正

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今回の「実践編」では、還元濾過のために、
「ナイトレイトマイナス」を直接、底砂の中に埋め込みました。
しかし、「実践編6:その後の日常管理」でも触れたように、
この方法では底砂の掃除をする際に「ナイトレイトマスナス」を掘り出さないよう、
気を付ける必要があります。

また1年、2年と飼育を続けていく間には、
還元濾過細菌によって消費された「ナイトレイトマイナス」を補充する必要が発生しますが、
底砂に直接、埋め込む方法では、
その補充の際にも底砂全体を掘り返すことが必要になるなど、
メンテナンスに関して不都合な部分があります。

そこで、このページでは、「埼玉在住のデニボールの鬼」びーのさんが考案された
「デニ弁当」にヒントを得た「放蕩流・偽デニ弁当」の使用により、
メンテナンスが楽で、効果も分かり易い還元濾過システムの提案をしたいと思います。

ただし、ここでご紹介する方法(「偽デニ弁当」)は、実は私自身でも、まだ試していません(^_^ゞ。
このサイトの公開と同時並行で立ち上げている水槽で実験しますので、
効果の程度は「
30cm水槽立ち上げ記録」をご覧頂き、
参考にしていただきたいと思います。

 

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◇ ◆ ◇ 「放蕩流・偽デニ弁当」のコンセプト ◇ ◆ ◇

「放蕩流・偽デニ弁当」とは、還元濾過細菌(通性嫌気性菌)の餌を直接、底砂に埋めるのではなく、少数の穴を開けたタッパーの中にサンゴ砂と一緒に詰めたもの(=「偽デニ弁当」)の中に入れることで、より効率的に貧酸素な環境を作り出し、還元濾過の能力を高めようというものです。
  「デニ弁当」のコンセプトはもともと、ベテランの海水魚タンクキクーパーである「びーのさん」が考案されたもので、本物の「デニ弁当」は、サンゴ砂を詰めるのではなく、還元濾過用に開発された特殊な濾材(還元濾材)を詰め、しかも遮光性を高めることによって、還元濾過の能力がより高められています。

しかし本物の「デニ弁当」に使う還元濾材は非常に高価ですので、ここではもっと簡単にして、サンゴ砂と還元濾過細菌の餌を詰めるだけにします。(だから「偽」なんです…(^_^;;)

それでも、この「偽デニ弁当」を底面板と並べて底砂に埋めることで、還元濾過細菌の餌を直接、底砂に埋め込むよりも効果は高まり、メンテナンス性も向上する「はず」です。

 

◇ ◆ ◇ 「放蕩流・偽デニ弁当」のメリット ◇ ◆ ◇

「放蕩流・偽デニ弁当」の使用は、底砂に直接、還元濾過細菌の餌(ex.テトラ「ナイトレイトマイナス」)を埋め込む「底砂埋込式」に比べて、以下の3つのメリットを持つものと思われます。
 
1. 還元濾過(脱窒)の能力が向上する
 
  • 「底砂埋込式」で十分な還元脱窒効果を得るためには、底砂の厚さが5〜8cm程度も必要と言われています。(ただし水槽の条件によって大きく異なります。)
  • しかし小型水槽で底砂をあまり厚くしてしまうと、水槽も狭くなりますし、飼育水の全体量も減ってしまいます。「デニ弁当」は、底砂に直接「還元濾過細菌の餌」を埋め込むのではなく、半ば密閉された(しかし小さな穴によって完全に密閉されてはいない)タッパーの中に入れることによって、「還元濾過細菌の餌」の周囲の水の流れを抑え、底砂を厚く盛り上げたのと同様の効果を得ようというものです。
  • タッパーに開けた穴の大きさ、数、位置、と中の砂の粒の大きさ等のバランスによっては、小さな「デニ弁当」でも、十分に大きな能力を発揮するはずです。
   
2. メンテナンス性が大きく向上する
 
  • 「底砂埋込式」の大きな欠点が、メンテナンス性の悪さです。底面濾過を使用していても、「還元濾過細菌の餌」が底砂の上に露出しないように注意しなければなりませんから、いわゆる「毒抜き」と呼ばれる底砂の掃除も十分には出来ませんし、水槽をセットしてから半年、1年後には「餌」の補充をしなければなりませんが、その際にも、どの程度の「餌」が消費されて、どの程度補充してよいのか分かりません。
  • ところが「デニ弁当」を採用すれば、これらの問題点は全て一気に解決します。
    「デニ弁当」の場合には、どこに「餌」が埋まっている場所は最初から特定されていて、しかもタッパーに守られているので、底面濾過の部分をいくら「毒抜き」しても「デニ弁当」の内部にまで影響が及ぶ事はありません。「餌」の補充の際にも、「弁当」ごと掘り出して、補充してやれば良いのですから、作業はずっと簡単に行う事が出来ます。メンテナンスの際の飼育水の濁りや汚れも少なくなると思いますから、結果的には飼育生体にもやさしいシステムになると思います。
   
3. 還元濾過の効果を目視で確認できる?
 
  • 「偽デニ弁当」のもうひとつのメリットとして、還元濾過の状況を目視で確認できる(のではないか)というものがあります。
    通常「底砂埋込式」の場合には、厚い底砂の奥で還元濾過が行われているので、還元濾過が行われている環境を、我々が目視する事は出来ません。しかし「偽デニ弁当」の場合には、(半)透明なタッパーの中に貧酸素な環境が作られますので、「偽デニ弁当」を覆っている底砂を少しどければ、タッパーの中がどのような状態が確認できるのでは?と思われるのです。
  • ただし、窒素の還元濾過(脱窒)が行われているだけの状態では、特に目視しても還元の状態を確認する事は出来ないと思われますが、貧酸素な状態が進み、硫酸還元が起きている場所では、サンコ砂が灰色〜黒に変色しています。そこでその色の変化を一つの指標に、還元濾過の状態をコントロールできるのでは?ということです。
  • 「偽デニ弁当」が理想的に働いている場合には、タッパーに開けた穴から遠い中央部がうっすらと灰色になり、穴の近辺はもともとのサンゴ砂の色がそのままに保たれているのではないかと思われます。
    穴の周囲までが灰色、または黒の場合には、「弁当」の内部全体が極めて貧酸素な状態になりすぎていますので、「弁当」の穴の数を増やすことで、内部まで少量の酸素が行き渡るようにすると良いでしょう。
    逆に全体がサンゴ砂の色のままであれば、全体に酸素が行き渡り過ぎていることが考えられますから、もう少し穴の数を減らす、穴を小さくするなどして、還元濾過の能力を上げることが出来ると思います。
  • ただし、この「目視できる」というメリットは、まだ私自身で確認できたものではありません。実際に立ち上げている水槽で効果を確認したいと思いますので、「30cm水槽立ち上げ記録」も読んでいただけると良いと思います。
  • なお、「偽デニ弁当」自体が光の当る場所に露出していると、そこでは光合成細菌が活動してしまい、還元濾過細菌の活動を抑える結果となってしまいます。ですから「偽デニ弁当」自体は必ず、底砂の中に埋め込んで、光が直接当らない環境に置くようにして下さい。
  • 追記;
    「偽デニ弁当」をセット後、3ヶ月を経過していますが、「偽デニ弁当」内部の色の変化は確認できていません。どうもこの「還元濾過の効果を目視で確認できる」というのは、「?」のまま、終りそうな雰囲気です(苦笑)。いずれにせよ、このまま観察を続けます。(2004年04月)

 

◇ ◆ ◇ 用意するもの ◇ ◆ ◇

特別なものは何もいりません。以下の3つを用意してください。
 
1. 小型のタッパー
 
  • 100円ショップで売っている小型のタッパーです。水槽の大きさに合わせて、底面板の隣に置ける最大サイズのものを選んでください。
    タッパーの両サイドに直径3〜5mmくらいの穴を10〜20程度、開けて使います。
  • タッパーの厚さは5cm程度のものが良いでしょう。それより薄いと効果が落ちますし、厚いとその分、底砂を厚くする必要があります。小型水槽ではあまり底砂を厚くしてしまうと、水量が減ってしまうので、適当なものを選んでください。
   
2. サンゴ砂
 
  • 水槽の底に敷くものと同じサンゴ砂です。
  • 砂粒のサイズをどれくらいにしたら良いかは現在の検討課題です。私は水槽の底砂と同じ「Mサイズ(5mm)」にしましたが、「デニ弁当」生みの親であるびーのさんは、「Lサイズ以上にした方がよいのではないか」とおっしゃいます。
  • 砂粒が小さい方が還元濾過の効果は上がるはずですが、粒が細かすぎると「偽デニ弁当」の内部の酸欠が進みすぎ、硫酸還元が起きてしまう危険性も高まります。
    「偽デニ弁当」においては、タッパーにあける穴の大きさと数、砂粒の大きさという3つの要素によって、タッパーの内部の酸素量をちょうど良い状態にコントロールするのがポイントなのです。
   
3. テトラ「ナイトレイトマイナス」
 
  • 還元濾過細菌(通性嫌気性菌)の“餌”となるものです。タッパーの中に、サンゴ砂と一緒に詰め込んで使用します。
  • 数年前まで野辺商会の「デニボール」という商品以外には無いような状態でしたが、ここ1〜2年で、他の様々な商品が発売されるようになりました。その中でテトラ社の「ナイトレイトマイナス」は価格も安いのですと、粒が小さいので、小型水槽でも使いやすい商品だと思います。

なお、当ページの公開後、2006年〜2007年ごろまでに、当ページでご紹介していますテトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」は販売終了となった模様で、2008年03月現在では、一部の店舗に店頭在庫品として残っているもの以外には、入手が困難な状況となっています。その後、テトラ社からは、同じ「ナイトレイトマイナス」という商品名で液体タイプの製品が販売されていますが、当ページでのセッティングは、固形タイプの「通性嫌気性従属栄養細菌の餌(還元濾過細菌の餌)」を想定したものです。
当方では、具体的な製品名や商品名の全てを把握してはおりませんが、現在では、テトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」以外にも、複数のメーカーから、同様の機能を持つ「還元濾過細菌の餌」が幅広く販売されており、実際の使用に何の不都合もありません。店頭においてテトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」が入手できない場合には、それらの代替商品のご購入/ご使用をお願いします

テトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」販売終了のお知らせを怠りましたために、これまでに何名かの方から、「ナイトレイトマイナスが入手できないのだが…。」というお問合せをいただきました。弊サイトの不手際のために、ご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。(2008.03.01)

 

◇ ◆ ◇ セット方法 ◇ ◆ ◇

真ん中に「ナイトレイトマイナス」が入るようにして、穴を開けたタッパーの中いっぱいに砂を詰めます。
  セッティングを順を追って説明します。

1.   100円ショップで買ってきたタッパーの両端に、直径3〜5mm程度の穴を、片側10個程度、合わせて20個程度、開けます。本体とフタと両方に開けてください。
この穴から飼育水がタッパーの中に入り、還元濾過されて発生した窒素ガスが出て行きます。
フタに段がついている場合には、ガスが抜けやすいように、なるべく高くなるところに穴を開けて下さい。
この穴の大きさ、数、開ける位置によって、還元濾過の効果が変わります。私もまだノウハウの開発中で、ベストのバランスを見つけていませんので、自分もやってみようと思う方は、ご自分で色々と工夫していただきたいと思います。
   

2.   タッパーに半分程度まで、サンゴ砂を詰め、その上に規定量+αの「ナイトレイトマイナス」を敷きます。
「ナイトレイトマイナス」はタッパーの中央部に多く、周辺部には少なくなるように、調整します。「ナイトレイトマイナス」の余分な成分がタッパーの外に流れ出ないようにするためです。
上にも書きましたが、この砂粒の大きさも、還元濾過効果を左右する大きな要素です。ここも現在、ベストバランスを検討中です。
   

3.   「ナイトレイトマイナス」の上に再度サンゴ砂を詰め、タッパーいっぱいになるまでサンゴ砂を詰め込み、タッパーにフタをすれば、「放蕩流デニ弁当」の完成です。
   

4.   完成した「偽デニ弁当」を、水槽にセットします。基本的には底面板の上には置かず、水槽底面で底面板がない部分に直接、置くようにします。
ただし、「デニ弁当」の嫌気が進み過ぎる場合には、底面板の上に置くと、また環境が変わります。ベストな位置はご自分で工夫して探していただきたいと思います
   

5.   底面板と「偽デニ弁当」の上から、底砂にするサンゴ砂を詰めます。底砂の厚さは自由ですが、「偽デニ弁当」がぎりぎり埋まるくらいの厚さまで、砂を敷けば良いと思います。
砂粒の大きさはMサイズ(5mm)程度が良いと思います。小型水槽ですので、サンゴ砂があまり大きすぎると濾過面積が小さいですし、パウダーのような砂では底面濾過が目詰まりしてしまいます。
   

6.   サンゴ砂が敷けて、「偽デニ弁当」が隠れれば、「放蕩流・偽デニ弁当」のセッティングの終了です。

何度も繰り返すようですが、この「放蕩流・偽デニ弁当」はいまだ技術開発中ので、このセッティングで本当に正しいのかどうか、まだ分かりません(^_^;;。興味を持った方はご自分でも色々とお考えになって、よりよいセッティングの方法を開発していただけるとありがたいです。

 

◇ ◆ ◇ メンテナンス ◇ ◆ ◇

飼育水のニオイとNO3の試薬で、嫌気濾過の進み具合を確認します。
  「偽デニ弁当」をセットした後は、水槽のニオイとNO3試薬の値を観察して、「偽デニ弁当」での嫌気濾過が上手く行っているかどうか、確認します。

1.   水槽から「卵が腐ったようなニオイ」がする 「偽デニ弁当」の中が完全な酸欠になっており、硫化水素(=卵が腐ったようなニオイのガス)が発生しています。

「弁当」を底面板の上に載せる
「弁当」の穴の数を増やす
「弁当」の中身の砂粒を大きなものに替える

などで、「弁当」の内部まで、緩やかな水流が発生するように工夫して下さい。

         
2.   NO3の値がどんどん上がって行って、全く下がらない 「偽デニ弁当」の中の水の通りがよくなりすぎて、酸素が供給されすぎており、還元濾過が始まらないものと思われます。

底砂を増やして厚くする。
「弁当」の穴の数を減らす。いくつかの穴をふさぐ。
「弁当」の中身の砂粒を小さなものに替える

などで、「弁当」の内部の酸欠状態が進むように工夫して下さい。


ただし、還元濾過がしっかりと機能するまでにはやはり最低3週間程度の時間は掛かると言われています。セッティング直後は安定しないと思いますので、1〜2ヶ月の長い期間をかけて、最適なバランスを見つけて下さい。

その他のメンテナンスは普通の底面濾過のメンテナンスと同じです。底砂クリーナーなどを使う事も出来ます。底砂クリーナーを使った定期的な底砂のクリーニングで、底砂の濾過能力を高いレベルにキープしてください。

 

◇ ◆ ◇ 注意事項 ◇ ◆ ◇

  • 何度も繰り返してしつこいですが、この「放蕩流・偽デニ弁当」は開発中の技術です。コンセプトとしては正しいはず(と思う…苦笑)ですが、筆者自身も、実際の運用に当っては、細かなバランスが良く分かりません。
    このサイトを見て興味をもった方はご自身の責任で、ご自身で工夫して、よりよい方法を考えていただきたいと思います。
  • また、万が一、水槽から硫化水素のニオイが発生していたとしても、少量の硫化水素であれば、かえって還元濾過を助けるという研究結果もあるそうです。それだけで大慌てする必要はないことも付け加えておきます。
  • なお、現在では、「デニ弁当」という方式ではなく、「還元濾過最近の餌」を不織布の袋の中に詰めて底砂の中に埋める方法で、浅い底砂の中でも還元濾過効果を高めようという製品が商品化されています。ご自分で工夫されるのが不安な方は、そうした製品を使われるのも良いでしょう。
    ただし、それらの製品は、ただの不織布の袋のくせに、1枚で何百円もします。原価を考えるとちょっと…。と思いましたので、私は「デニ弁当」方式を採用したいと思いました。
  • いずれにせよ、還元濾過の技術と言うのは、まだ完全に完成されたものではなく、商業ベースにおいても、様々な新技術、新方式が試みられている状態です。色々な知恵を出し合って、よりよいものにしていけたら、と思います。
    何か良い情報があれば、是非、
    掲示板にでも書き込んで下さい。

 

 

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