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海底三百ミリメートル・知識編 [1]

海水魚飼育の心得

 

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私が海水魚を飼育しようとして海水魚飼育の情報を集め始めたのが1998年の初め、
実際に飼育を始めたのが同年の11月からですから、
まだ、たかだか6〜7年にしかなりません。

飼育暦20数年という大ベテランの方がいる中で、
そんな私が「心得」と言うのもおこがましいのですが、
「初心者のことは初心者の方が分かりやすい」ということもあるでしょうから、
私の短い飼育暦の中で、「ここだけは気をつけた方が良い」と思う事を
最初に書いておこうと思います。

これから海水魚を飼育してみよう、と思う方は、
是非一度、読んでみて下さい。

(2004.02)

 

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放蕩流

海水魚飼育心得 五ヶ条

 

一. ショップの「海水魚入門セット」などを買わないこと
 

初めて魚を飼おうと言う人には、何が必要で何か不要なものなのか、自分では分からないと思います。そんな時に頼りたくなるのが、ショップに置かれている「入門セット」ですね。
でも最初から「入門セット」を買って、説明書の通りにセッティングするのでは、それぞれの器具がどんな役割で、何が大切なのか、理解する事が出来ません。それよりは自分で勉強して、どんな器具が、なぜ必要なのか、を良く理解してから、自分の判断で道具を買い揃えるようにして下さい。
その道具が必要なものなのか、不要なものなのか、判断できるようになれば、それは海水魚を飼うための「仕組み」を、あなた自身で理解できた、ということになります。それらの知識は長く海水魚飼育を楽しむためには、いずれ不可欠なものになるでしょう。インスタントに出来るものは、所詮、長続きしないものです。

それにしばしば、最初から「入門セット」できちんと飼育できるのは、相当なスキルを持ったベテランだけだったりするものですよね(笑)。

   
一. スターターフィッシュを使わないこと
 

海水魚水槽を立ち上げる時に、スターターフィッシュを入れるのは(私も使いましたが)、間違いです。(と、今では私は考えています。)
スターターフィッシュは水槽立ち上げ当初の過酷な環境の中で生活するわけですから、たとえ死ななかったとしても、どうしても、白点病などの病気に罹りやすくなります。
魚さえ入れなければ、水槽の中に白点病の病原体である寄生虫(原虫)が繁殖することはないのに、わざわざ魚を入れて病気(白点病)に罹患させるのは、わざわざ白点病の病原虫を養殖しているいるようなものではないでしょうか。

運良くスターターの魚が生き残ったとしても、スターターに使われることの多いスズメダイの仲間は、仲間同士で殺し合いをする生き物ですから、半年程度のうちには必ず、たった1匹を除いて、皆死んでしまいます。最初から殺し合いをさせるために飼う(買う?)ようなものです。

そうではなくて、最初は魚を入れずに、魚の代わりにアンモニアを出す魚の餌や肉片などを入れて、1ヶ月、我慢してください。その方がずっと安全に、確実に、良い環境を作ることが出来ます。
初心者の方は特に、そういう方法が書いてある飼育書や教えてくれるショップを捜すことを強くお勧めします。

   
一. トラブルが起きても、むやみにショップの言う通りにしない
 

ショップの店員の知識などは偏ったものです。(もちろん私の知識もですが。)
ある分野には詳しくても、別の分野には全く間違った知識を持っていることも、決して珍しいことではありません。しかもお店でほんの二言、三言、話しをしただけで、返事を返してくるのですから、適切なアドバイスなど出来るわけがないではありませんか。

そうではなくて、迷った、困った時にはショップで聞いたり、ネットで質問したりして、色々な“セカンド・オピニオン”“サード・オピニオン”を集めて下さい。
そしてその際には、出来るだけ詳しく、自分の水槽の状況、立ち上げてからの経緯などを、しつこいくらいに説明した上で、相手の意見を聞いて下さい。
ただし、相手も神様ではありません。常に正しいアドバイスが出来ることはあり得ないのですから、色んな人の色んな意見の中から、たったひとつ、自分で最も正しいと思う方法を選ぶことをお勧めします。

   
一. 魚を買う&飼う前に、たっぷり勉強すること
 

私は「海水魚」を飼いたい、と思ってから、水槽を買うまでに半年以上、水槽を買ってから魚を入れるまでにさらに2月程度、本を買ったり、図書館で借りたり、ネットで調べたり、色々と勉強しました。お陰でウチの水槽では最初から一度も、白点病が出たことがありません。(←自慢?…笑)

誰にも同じ様にやれとは言いませんが、あまりにも安易に飼育を始めるのは考えものです。魚だって生き物ですし、何年も、何十年も、同じ魚を飼育出来るのです。犬、猫の寿命と変わりません。
長いつきあいをする“家族”ですから、焦らずじっくり勉強して、十分なイメージトレーニングをしてから、魚を飼い始めて下さい。そうすれば大抵のトラブルにも落ち着いて対処することが出来ますし、何が正しくて何が間違っていることなのか、判断することが出来るようになると思います。

また十分な知識があれば、他人に質問する時でも、回答に必要な正しい情報を提供することが出来るようになるでしよう。勉強せず、知識が足りない人の質問は、しばしば、質問自体が「とんちんかん」なものになりがちです。それでは正しいアドバイスなど、受けることは出来ません。

「そんなこと面倒臭くていやだ!」と言う人は、せめて十分なお金を用意して飼育を始めて下さい。イニシャルコストで50〜100万円くらい用意できれば、あまり失敗せずに、飼育を始めることが出来ると思います( ̄ー ̄) ニヤリ。

逆にそれだけのお金を用意できないなら、是非自分で勉強してください。手間と時間はかかりますが、お金は1/10もかかりません。
どちらの道を取るかはご自身の自由とは思いますが、ただこのサイトをご覧になっているかはもう十分、前者の道をえらんでいるのでしょうね(笑)。

   
一. 一に我慢、二に我慢、三、四がなくて、五に我慢
 

海水魚飼育を難しいと言う人がいます。「淡水魚の3倍、難しい」と言っている人もいました。
でも個人的にはただ単に「淡水魚の3倍、我慢が必要なだけ」だと思います。

海水の濾過バクテリアが繁殖して、水槽の濾過体系が安定するまでには、実は半年くらい必要なのだそうです。それまでには様々なバクテリアが、水槽の中で増えたり、減ったりしています。それでも実際の海の中の変化に比べれば、ずっと早いスピードでしょう。陸上の池や川は、雨が降ったり日が照ったり、それだけですぐ、環境が大きく変わってしまいますね。でも海の中は一年中水温も大きくは変わらないし、何万年も前から、ずっと変わらない部分も多いのです。一日や、あるいは数時間で変化してしまう陸上の(淡水の)環境とは、変化のスピードが違います。

そんな「海」を、我々の家の中に再現しようというのですから、我々も陸上の思考速度で考えては行けません。とにかく焦らないこと。そして欲張らないこと。
じっくりじっくり、我慢して我慢して、ゆっくりと濾過サイクルを作り上げていくことが、実は一番の早道です。焦れば結局、最初からやり直し。同じことを繰り返すだけで、少しも成長することが出来ません。

   

【 番 外 】

一. 魚が死んでも追加はしない
 

海初心者の方が水槽全滅→ついには海水魚飼育を断念に至るパターンとして非常に多いのが、白点病などで魚が死んだ後、すぐ次の魚を追加する、というものです。これをやるとかなりの高確率で水槽の魚を全滅に導きますので、「心得」というよりも、むしろ絶対的な禁止事項だと考えて下さい。

白点病などの病気で魚が死んだ後の水槽には、ものすごい数の病原体(白点病なら白点原虫)が繁殖しています。そもそもどんな病原体も、少数では魚を殺すまでには至らないので、「魚が死んだ=病原体が大繁殖」なのです。(たとえ眼には見えなくても。)

そんな水槽の中に、新しい魚を入れたらどうなると思いますか?新しい魚は移動の為に絶食させられ、移動の際のストレスを溜め込み、しばしば疲れきり、弱りきった状態にあるものです。そのような魚を病原体だらけの水槽に入れるのは、伝染病の隔離病棟に、何日もろくな食事もしていない「行き倒れ」寸前の旅人を泊めるようなものではないでしょうか?
水槽に慣れた魚なら、少々の病原体の繁殖にも抵抗することが出来ます。しかし水槽に慣れておらず、免疫力が落ちた新参の魚を、病原体だらけの水槽に入れたのではたまりません。新しい魚はたちまち病気になり、水槽の中には以前にも増して病原体の数が増え、やがては元気だった他の魚、一匹目が死んだ時には平気だった魚にまで、病気が広がって行くでしょう。

時々、「なぜいつもすぐ病気になるのか、分からない」などと言う方がいらっしゃるのですが、魚が死んだ直後の水槽に新しい魚を追加したのでは、「なぜ病気にならないのか、分からない」と言うべきです。
魚が病気で死んだら、最低、一ヶ月間程度はそのまま、生体の追加などはせずに、じっと我慢して下さい。明らかに問題がある場合や、短期間で確実に濾過能力を上げることが出来ると思われる場合以外には、その間、濾過槽の掃除や濾過システムをいじるのも、止めておいた方が安全です。(濾過シスムテに手を入れれば必ず、一時的に濾過能力が落ちるので。)

新しい生体の追加は、その後一ヶ月間、じっくりと生き残った生体を観察して、全てが元気であることを確認した後です。最初は大繁殖していた病原体も、健康で頑丈な魚ばかりなら寄生して繁殖する事が出来ず、徐々に数が減って行きます。死んだ魚が最後の1匹だったとしても、新しい魚を入れてはいけません。空っぽの水槽に、濾過バクテリアを維持するために魚を餌を入れるだけで、一ヶ月、じっと待って、病原体の数が減るのを待ちます。

一ヶ月たって、残った魚が全て元気なら、水槽の中の病原体はかなりの数まで減っていることでしょう。かと言って「0」にはならないのですが、それは仕方ありません。海水魚ショップでは新しい魚が新しい病気を持ち込まないように、じっくり時間を掛けて、元気で抵抗力の強い個体を選んで下さい。
この我慢が出来なくてすぐに次の魚を追加してしまえば、後は「地獄のスパイラル」の始まりです。死んでしまう(殺されてしまう?)魚も可哀そうですし、無駄なお金を支払うあなたも可哀そう。どんどん無駄に命が奪われ、その代わりに、ショップの売上だけが伸びて行く図式の完成です。
このサイトをご覧になったあなたがそのようなパターンに陥らないよう、「魚が死んでも追加はしない。」これだけは覚えておいてください。

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