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カクレクマノミ繁殖ノウハウ集 [3]

産卵〜孵化までの変化

 

ペアが出来たら、次は産卵です。
産卵の準備行動から卵が孵化するまでの過程を、
順を追って説明します。

 

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1.産卵の時間
 

産卵は我が家のペアのばあいには、たいてい、夕方〜深夜にかけて行われました。
時間は特に一定していなくて、「消灯後」などに決まっているわけでもありません。
「潮の満干」との関係も考えられますが、まだ検証出来ていません。

また産卵の間隔は2週間〜3週間おきくらいで、余り一定していませんでした。前の卵が孵化して数日で再び産卵することもあれば、少し間が空くこともあります。
親の体調や栄養状況によると思われます。

   
2.産卵する場所
 

一般的に「マイホーム」にしているイソギンチャクの触手の端が触るくらいの場所のライブロックなどに、産みつけることが多いようです。(我が家もそうでした。)
表面が平滑な方が良いようで、ザラザラギザギサの部分は嫌うのではないかと思います。
繁殖させてみたいと思う方は、イソギンチャクの周囲に、表面が滑らかな、サンゴ岩などをレイアウトしておくと、産卵場所を誘導できるかもしれませんね。

一度産卵する場所を決めると、その後は同じ場所に産み続けると言われています。
我が家の親クマも、3回目の産卵以降ずっと同じ場所に産み続けています。

ただ、必ずしもイソギンチャクが必要ということではないようで、イソギンチャクなしでも、水槽内のパイプや植木鉢などに生みつけた、という例も多いと聞いています。

   
3.産卵の準備行動
  産卵が近づくと、クマノミの夫婦は揃って、産卵場所の掃除を始めます。
掃除は、口で岩の表面をかじるようにしますので、掃除が終わった後の夫婦の口元を見ると、白くただれたようになっていることもあります。「すり傷」になってしまうのです。
この「お掃除」は、だいたい、産卵の前日くらいの感じです。
   
4.産卵当日の様子
 

産卵の数時間前には、夫婦のお尻から産卵管と精輸管が出ているのが分かるようになります。
産卵管と精輸管はどちらも茶色で、お尻から1〜2ミリ程度、飛び出しています。
この時にはもう、メスのお腹はパンパンに膨らんでいます。

同じころ、オスの方は一生懸命、イソギンチャクの触手に噛み付くような行動をしている場合があります。産卵場所は、そのままではイソギンチャクの触手が届く範囲ですので、その触手に噛み付いて縮めさせて、卵の部分には触手が触れないようにするのではないかと思います。
同じことは稚魚の孵化の前にも行われます。

ただし、実はこれが何のためかは、私にはもうひとつ分かりません。
というのも、産みつけられた後の卵には、イソギンチャクの触手が触れても問題ないからです。
良く観察していると、イソギンの触手が卵に触れるのは迷惑そうな素振りは見せているのですが、だからと言って、卵が死んでしまうわけでもないですし、卵数孵化するまでの間、ずっと、イソギンの触手を攻撃している訳でもないのです。
産卵直後の卵は弱いとか、産卵管を刺されると良くないとかの理由かもしれませんが、ちょっと不思議ですね。

   
5.産卵行動
 

やがて準備が整うと、メスが産卵場所にお腹をこすりつけるようにしながら、身体を震わせます。
産卵行動の開始です。一度にいくつも産むのではなくて、基本的には一つずつ、丁寧に岩の表面に産み付けていきます。

カクレクマノミの場合、卵は長径2mm、短径1mm程度の楕円形で、細長い、黄色の半透明の色をしています。
超小型の「ビーンズグミ」のオレンジ味みたいな感じ、と言うと分かり易いでしょうか。(分かりにくいですか?…苦笑)
その細長い卵の先端にポツッと白い点がついており、それが「胚」と思われます。
その卵をびっしりと隙間なく、100〜400程も産みつけると、その卵塊は黄色の絨毯のような感じになり、非常に美しくて、かつ「美味しそう」です。(だって、ホントにグミみたいなんだもん…笑)

産みつけた後の卵には早速、オスが胸ビレで煽るようにして、新鮮な海水が当るように世話をします。
(その間に精輸管を通じて受精しているはずですが、まだ確認できていません。)

   
6.孵化までのお世話
 

卵が孵化するまで、卵の世話はほとんど、オスの役目です。
時々はメスもお世話をするようですが、本当に気が向いた時だけ、胸ビレで卵を煽ってやることがあるくらいです。

一方、オスの方はほとんど不眠不休で、卵に新鮮な海水を送り続けます。この間は餌をあげてもオスはほとんど食べに来ません。特に孵化が近づいてくると、餌などには目もくれないようになります。
私の妻はいつも、これを見て「お父さんは大変だね〜。偉いね〜。」と言っています。
メスの方は卵を産んだ後は、「後は任せた」という感じて、バクバク餌を食べますけどね(笑)。

卵塊の中には無精卵や死んでしまう卵もあるようで、そのような卵はオスが間引きをします。
オレンジ色で透明な卵塊の中に、白くて不透明なものがあるので、それと分かります。
そして卵の孵化が近づくと、オスの「お世話」はますます激しさを増して、まるで卵に海水を叩きつけるように、全身で卵を煽るようになります。そうなると孵化も間近です。

   
7.孵化までの卵の変化
 

最初は綺麗な黄色〜オレンジ色だった卵が、数日後には茶色〜黒っぽくなり、目立たなくなります。
5〜6日程度経過すると、卵の外側(殻)は透明になって、中にクマノミの稚魚がいるのが分かるようになるでしょう。クマノミの銀色の目玉が二つと、その真ん中に黒い線のように見えるのは、クマノミの背骨(もしくは胴体)と思われます。
7〜8日目にはますます透明になり、卵の中にいる稚魚の模様(お腹に白い模様がある)が分かることもあります。

また卵塊全体の姿にも変化があります。最初は卵の向き全体が揃っていて、毛並みの良い絨毯のように見えますが、孵化直前の卵の向きはバラバラで、卵塊全体にもまとまりがありません。
ひとつひとつの卵が別々の向きになって、台風の後の水田のような感じ(わかりますか?)です。

卵がそんな感じになって、オスの「お世話ダンス」が激しさを増せば、そろそろ孵化。
我が家では大抵、産卵の翌日から数えて9日目の夜に孵化しますが、これは水槽ごとの水温などの条件によって変化するようです。

【 卵の変化写真 】


産卵翌日の卵。まだ黄色。先端に白い胚が見える。お父さんがお世話中。
(2004.01.30夕方産卵/01.31夜撮影)


産卵後3日経過。卵が黒くなって、一見するとカビのように見える。でも生きているからご安心を(笑)。
(2004.01.30夕方産卵/02.02夜撮影)


もう銀色の目玉がはっきりと見える。卵の角度によっては、両眼が黒く、真ん中に脊髄が通っているのも分かる。
(2004.01.30夕方産卵/02.06夜撮影)


予定より2日早く、一部の卵が孵化してしまった。孵化翌日の稚魚。透明な身体、大きな目、お腹の横に白い斑点がある。
半分程度が孵化して、残りはまた、この日の夜に孵化するのだろう。
(2004.01.30夕方産卵/02.07朝撮影)

 
8.孵化の様子
 

産卵は明るい時間帯にも行われますが、卵の孵化は水槽が真っ暗になった後と決まっています。
我が家の水槽はリビングに置いてありますので、水槽のライトが消えても、午前1時くらいまでは、水槽の中は明るい状態です。この状態ですと、稚魚は孵化しません。

もっと早い時間に孵化をさせるためには、早めに水槽の電気を消し、部屋の電気も消して、水槽内を真っ暗にしてやります。厚手の黒布などで水槽を覆っても構いません。
部屋の電気を消したり、黒布を掛けたりした後、30分から40分くらい静かに待って、その後懐中電灯などで水槽の中を覗くと、全長3〜4mm程度の稚魚が、ピコピコと泳いでいるのが観察できると思います。

一度に全部の卵が孵化せずに、少量(10とか20とか)の卵が残ってしまうことはありますが、一時間待ってもほとんどの卵が残っており、稚魚が泳いでいなかったら、本格的な孵化は次の日でしょう。いったん部屋を明るくして、次の日に備えてください。

孵化の瞬間は、真っ暗な中で行われるので、私も直接、見たことがありません。
そのうちお金持ちになったら赤外線スコープでも買って観察したいと思っていますので、気長にお待ち下さい(笑)。

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以上がカクレクマノミの産卵から孵化までの様子です。
クマノミの産卵から孵化までの日数は、
我が家の場合にはほとんど、9日間と決まっています。
(1日程度の前後はありますが。)

この日数は飼育環境によって変わるようですが、
飼育環境が変わらなければ、だいたい同じになるそうです。
稚魚を育てる時には、稚魚を採取する前に、一度、
産卵から孵化までをじっくり観察し、
日数を数えておくと良いでしょう。

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