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放蕩見聞録・番外篇[2]
米原海岸のサンゴ白化 2007

−2007.11.18UP−

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2007年10月上旬、今夏、激しいサンゴ白化が起きたという沖縄・石垣島に行きましたので、
そこで私自身が撮って来た、2007年の石垣島・米原海岸の白化サンゴの写真をご紹介します。

今夏の八重山地方では、7月の終わりごろから水温が30℃を超える日が続き、
その後、例年より数多い台風の接近などもあったにも関わらず、
八重山地方としてはかつてないほどの激しさでサンゴの白化が進みました。
その規模は世界中で大規模なサンゴ白化が観測された98年をも上回るのではないかとも言われ、
今後の推移や、八重山の海の変化が注目されるところです。

私は既に10年ほど(学生時代から含めると一時の中断を含めて四半世紀に及んで)、
ほぼ毎年、八重山の海に遊びに行っていますので、
今年のサンゴ白化の情報を聞き及び、何としても自分の眼で確認したいと思っておりましたが、
仕事等の関係で、8〜9月の、サンゴ白化の一番激しい時期には沖縄を訪れることが出来ず、
少々遅れての訪問となりました。

とは言え、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、この時期はちょうど、
「大型で猛烈な台風」15号が八重山地方を(ほぼ)直撃した時期(^_^;;。
2007/10/4〜10/9までの6日間の日程の中で、私が海に入れたのは、
10/4のお昼ごろに少しと、10/8だけでした(苦笑)。

しかも、事前に「米原海岸のサンゴ白化が激しいらしい。」という情報を得て、
米原海岸に行くことにしてはみたものの、これまで10数回以上も石垣・八重山を訪れながら、
私が石垣島のスノーケリングポイントとして有名な米原海岸に行ったは、これが初めて。
(いつもは石垣島には滞在せず、黒島や西表島に渡っているのです。)
台風の影響や安全性などを確認しつつ、水中地形を把握するところから始めましたので、
じっくり写真を撮ることは出来ませんでした。

その上、10/4も10/8もほぼ曇り空で、風も強く、波も有り、水中が濁っていましたので、
あまり綺麗に撮れた写真はありません。
器材運搬のトラブルで水深計や温度計も使えず、
スノーケリングしながら気になったところを無造作に撮っただけの写真ですので、
資料的な価値はないことをご承知おきいただきたいと思います。

ダイビングインストラクターや研究者などの“プロフェッショナル”の眼ではなく、
個人の趣味としてスノーケリングを楽しんだ旅行者が目撃した2007年の白化の状況として、
ご覧いただければ幸いに思います。

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基本情報 (2007.10訪問)
 
  所在地 沖縄県 石垣市 字 桴海米原
  アクセス
  • 石垣市街からバスで1時間弱、「米原キャンプ場)」下車。
    ただし、バスは数本が少ないので、レンタカー利用の方が便利。
  • レンタカーであれば石垣市街から30〜40分程度。
  参考サイト アイランド石垣
http://www.cosmos.ne.jp/~ogura/home.htm
http://www.cosmos.ne.jp/~ogura/sight/yonehara.htm
  周辺施設等
  • 米原海岸のリーフ外は時に流れが強く、またリーフカレントなども発生するため、建前上は遊泳禁止。
    ただし、以前は海水浴場に指定されていたらしく、隣接するキャンプ場にはシャワーやトイレ、更衣室などの設備も整っている。現実的には今も、石垣島でも有数のシューケリング・ポイントであるとされている。

  • ただし、遊泳禁止は遊泳禁止ですから、海岸には監視員などもおらず、シュノーケリングをするのもあくまでも自己責任で。
    こういう場所で遊ぶ時こそ、安全に万全な注意を払い、万が一にも地元の方に迷惑をかけるようなことは避けなければなりません。くれぐれもお気をつけ下さい。
   
礁池内の浅場(水深1m以内)の状況
 

波打ち際から数十mの場所で、もともと水温も高く、生きたサンゴがほとんど見られないような場所ですが、そのような場所でもこぶし大の小さな塊状サンゴ(ハマサンゴの仲間?)が見られました。ところがその小さな塊がことごとく白化しています。まるで水底に白いオニギリが転がっているように感じました。
(10/4撮影)
また、大きな塊状サンゴがまるごと白化しているような状況も、あちこちに見られます。
(10/4撮影)

ところがこのような場所でも、ハタゴイソギンチャクのような高温に強い種は比較的健康です。
10/4にこのハタゴイソギンチャクを見た時には、もっとサイズの大きなメス(全長6cmくらい)とペアになっていたと思うのですが、10/8に見た時には、全長4cmくらいの、おそらくペアのオスではなかったかと思われる個体しかいませんでした。10/5〜10/7間での間は台風の影響で全く海には入れなかったのではないかと思うので、個人的には、誰かに採集された等ではなく、台風の波でメスが流されてしまったのではないかと考えています。
(10/8撮影)

ハタゴイソギンチャクにはイソギンチャクエビ(イソギンチャクカクレエビ)やイソギンチャクモエビの他、カニダマシなども共生しています。
(10/8撮影)

一方、同じような環境でも、イボハタゴイソギンチャクはすっかり白化して、クリームイエローのような色になっていました。上のハタゴよりもこちらのイボハタゴの方がやや外洋よりで、水深も僅かに深かったのですが、白化の程度は深刻でした。イソギンチャクの種による耐性の違いでしょうか?
こちらにはカクレクマノミではなく、クマノミ(並クマ)とミツボシクロスズメダイが共生していました。
(10/8撮影)
僅かに残っている枝状のサンゴ(これはユビエダハマサンゴ?)もすっかり白化して、完全なガレ場になろうとしているように感じました。
(10/4撮影)
   
礁池内の水深2〜4m程度の場所の状況
 
米原の海岸はリーフ内でも水深が数メートルに達する部分があり、そのような場所にはまだ、比較的健康なサンゴも残っていました。
これは何サンゴでしょうか。ユビエダハマサンゴ?サンゴの種類には詳しくありません(^_^;;。
(10/4撮影)
こちらもやはり、水深2〜3m程度の場所です。
画面左側のシコロサンゴ(の仲間だと思う(^_^;;)は健康な様子に見えましたが、その奥側、画面中央の枝状サンゴは群体全体がすでに死んでおり、全体が茶色の苔(藻類)に覆われています。
同じような環境にあっても、サンゴの種類によって白化の程度は異なりますし、また白化に対する抵抗力も異なっているようです。
(10/4撮影)
ユビエダハマサンゴ?やシコロサンゴ?などに比べると枝上のサンゴ(ミドリイシの仲間?)は高水温に弱いようで、白化はより深刻な状況になっていました。

こちらのサンゴはまだ白化直後で白い色が目立ちますが、すでに先端部分から、茶色の苔(藻類)に覆われ始めています。手前側にはすっかり茶色の藻類に覆われてしまったサンゴも見えますね。
(10/4撮影)
礁池内で、周囲は水深2〜4m程度の場所ですが、枝サンゴの群落のトップは水深1m以浅まで伸びています。
そのサンゴの枝はほとんど白化しており、群落の根元はヒゲ状の茶色い苔にびっしり覆われていました。
ポリプをじっくりと観察したわけではないのですが、個人的には、枝サンゴの仲間では、健康なものは1割程度残っているかいないか程度ではないか?という印象を受けました。
(10/8撮影)
ただし、何分、礁池内のことですので、毎年、ある程度の白化は起きているものと思います。死んだ枝サンゴが目立つとは言っても、それが今年の白化によって死んだものであるのか、それとも昨年以前に既に死んで残っていたものなのかは、私には分かりませんでした。昨年以前の状況を知っている場所を観察出来れば良かったのですが、今年は台風のために毎年通っている黒島や西表島に渡ることが出来ませんでしたので、その点が残念です。
(10/8撮影)
スギノキミドリイシ?
青い部分はまだ生きているはずです。白い部分は最近白化した部分。薄茶色の部分は白化が進んだものか、白化から回復途中のものか、あるいは白化して死んだ後に茶色の苔が付き始めたものか、ちょっと判断がつかない部分があります。いずれにせよ、健康な部分はごく一部です。
(10/4撮影)

ちなみに、白化の結果として枯死してしまった枝サンゴは、やがてこのように藻類に覆われてしまいます。この枝サンゴも多分、元は上記の写真と同じスギノキミドリだと思いますが、このような状態の枝サンゴの群体もあちこちに見受けられました。
(10/4撮影)
こちらは白化して枯死した直後のサンゴの状態。緑色の藻類がつき始めています。右上のテーブル状のサンゴ(多分ミドリイシの仲間)も、既に枯死して、藻類に覆われた状態です。
(10/4撮影)
こちらの枝サンゴはまだかろうじて生きていると思うのですが、深い場所にあるひだ状のサンゴはすっかり白化してしまっています。緑色に見えるのもサンゴの色ではなくて、サンゴが死んだ跡に生えてきた藻類の色でしょう。

枝サンゴの間にはまだ、沢山のスズメダイが泳いでいましたが、サンゴが死んでガレ場になってしまえば、やがてこのスズメダイたちもいなくなってしまうかもしれません。それまでにサンゴは復活してくれるのでしょうか。
(10/8撮影)

水底近くの塊状サンゴも、すっかり白化しています。

サンゴは白化しただけではすぐに死ぬことはありません。一度白化しても、比較的短時間に水温が元に戻り、サンゴに掛かるストレスが軽減されれば、抜け出た褐虫藻が回復して、また元の状況に戻ることもあります。
しかしここまで白化が進んだ状況から、どの程度まで回復することが出来るのでしょうか?
(10/8撮影)
このように、真っ白になってもポリプを出しているサンゴもあります。
これはハナサンゴの仲間ではないかと思いますが(違っていたら申し訳ありませんm(_*_)m。どなたか訂正をお願いします(^_^;;。)、一見、非常に美しいとさえ感じてしまいます。

しかしこの状態が長く続くと、サンゴは栄養不足になってやがて枯死してしまいます。そうなる前に、少しでも早く回復してもらいたいものです。
(10/8撮影)
   
アウトリーフの状況
 
リーフ上の礁原からアウトリーフに向かって下っていく主面の途中にあったサンゴ群体です。これもハマサンゴの仲間でしょうか?それともショウガサンゴ?
いずれにせよ、この写真だけ見ればとても美しく見えますが、やがて苔(藻類)に覆われて、周りの岩盤と区別がつかないような状況になってしまうことでしょう。
(10/8撮影)

アウトリーフの状況は、さすがにインリーフの状況に比べるとずっと「まし」に見えます。

ただし、やはりところどころに完全に白化しているサンゴがあるのが見え、やはり全体として健全な状態ではないように見受けられました。
また、水面からスノーケリングしている状況では、白化の後に完全に死んでしまい、藻類に覆われて茶色くなり始めたサンゴ群体は、一見すると健康なサンゴと見分けが付かない場合もあります。写真では健康なように見えても、その実、既に死んでしまった後のサンゴ群体もあるのかもしれません。
(10/8撮影)
毎年、八重山に来てアウトリーフでのスノーケリングを楽しみますが(もちろん場所の違いはあるとは言え)、視野の限りどこにも白化したサンゴ群体が目に入るというのは、初めての経験です。八重山サンゴ礁保全協議会のWEBサイトなどによれば、この時(10/8)には既に、米原のサンゴは白化からの回復過程に入っていたようですが、それでもまだまだ、深刻な状況に感じました。
(10/8撮影)
こちらの写真の方が状態が分かりやすいでしょうか。
画面右上の黄色くなった群体が目立ちますが、よく見ていくと、中央部の上の方、左側、下側全体に白化した群体が沢山見られます。
(10/8撮影)

さらに、やや深場(水深10m以上)で、岩盤を覆うように発達した被覆状サンゴが、広い範囲で白化している場所もありました。
このような場所では、これから、サンゴ礁の生き物の生態系に、どのような影響が現れるのでしょうか。
(10/8撮影)
スキンダイビングで5m以上潜った場所にあったミドリイシの群体。アウトリーフでも、きれいに白化しています。

実はこの日は体調もすぐれず、サイナス(副鼻腔)のスクイーズを起こしてしまいましたので、あまり深く潜っって写真を撮ることができませんでした。残念です。
(10/8撮影)

ちょっと距離が遠くてはっきりと写っていないのですが、大きなテングハギ(だと思う)の群れなどがいました。リーフ内を含めて、現時点ではまだ沢山の魚も見られたのですが、サンゴの白化によって、これらの魚に今後、どのような影響が出るのか、引き続き注目していくことが必要と思います。
(10/8撮影)

 

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サンゴの白化の詳しいメカニズムや原因などは、私には良く分かりません。
高水温の継続が直接的な契機であることだけは知っていますが、おそらくはそれだけではなく、
それ以前に様々な要因でサンゴの抵抗力が衰えていたことが、
これだけの白化に繋がったのではないでしょうか。

今回の八重山のサンゴの白化については、98年の白化の際の経験から、
比較的早い時期から警戒され、地元メディアなどでは繰り返し報道されたほか、
(例えばこちら→「
やいまねっと」など)
環境省国際国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターなどのWEBサイト上でも、
各地の観測状況などが継続的に報告されています(↓)。

環境省国際サンゴ礁研究・モニタリングセンター
(
http://www.coremoc.go.jp/status/bleaching.html)

八重山サンゴ礁保全協議会
(
http://homepage3.nifty.com/sango-hozenkyou/hakka.10.29.htm)

私が撮って来た写真を見てご興味を持たれた方は是非、これらのサイトもご覧下さい。
そして今後も継続的に、八重山の海の状況に関心を持っていただきたいと思います。

また、私はこの米原海岸は、今回初めて訪れたのですが、この前年・2006年に、
米原海岸から数Km西の
ココスビーチ(川平山原・かびらやまばれ)でスノーケリングを楽しみました。
天候や透明度など、撮影の条件が大きく異なりますので、単純な比較は出来ませんが、
その際の様子も弊サイトの「
放蕩見聞録・沖縄&八重山篇[3]ココスビーチ」に掲載しています。
ご興味のある方はご覧いただいて、サンゴの状況などを見比べていただくと良いかもしれません。
(ただし、上記ページの閲覧には
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自然を大切に。
美しい海や生き物を、いつまでも大事にして行きましょう。

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