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放蕩見聞録・水族館篇 [13]
マリンピア 松島水族館

 

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基本情報 (2006.08記入)
 
  所在地 〒981-0213 宮城県宮城郡松島町松島字浪打浜16
  アクセス
  • 仙台からJR仙石線30分「松島海岸駅」下車。徒歩すぐ。
  電話番号 022-354-2020
  営業時間 9:30〜17:30 (3/1〜7/19)
9:00〜18:30 (7/20〜8/31)
9:30〜17:30 (9/1〜11/30)
10:00〜17:00 (12/1〜2/末日)
※最終入館は閉園の1時間前で終了
  定休日 年間無休
  入場料金 1,400円(高校生以上)/700円(小中学生)/350円(3才以上小学生未満)
※JR「松島海岸駅」で割引入園券を販売中
  公式サイト http://www.marinepia.co.jp/
   
独断と偏見による概要
 
  • 「日本三景」のひとつ、松島湾を望む国営「松島公園」に隣接して立つ、歴史のある水族館です。完全民営の水族館で、1927年(昭和2年)のオープン。現在の建物は1974年(昭和49年)と1980年(昭和55)に完成したものだそうです。
  • 立地条件から考えても、経営母体を考えても、さらに建物が古いことも考えて、「所詮、観光客目当ての、ショボイ地方水族館に過ぎないんだろう?」と、タカを括って見に行ったのですが(^_^;;、実際に見学してみてビックリ!
    建物自体は確かに古く、新しい水族館のような「大水槽」などもありません。生体の展示方法も取り立てて新しいものはなく、他の水族館では見られない希少種も多くはないと思うのですが、飼育職員の方たちの工夫とホスピタリティが素晴らしくて、ついつい、長居したくなりました。水槽の一つ一つに添えられた手作りの説明板などを丁寧に読んでいくうち、職員の方たちの気持ちがしみじみと伝わって来て、何とも言えぬ暖かい気持ちにさせてくれるのです。
    言い方が良くないのかもしれませんが、「ボロは着てても心の錦」と、そんな心意気が感じられる、本当に楽しい水族館でした。
  • また、水族館の中に小さな遊園地があり、コーヒーカップやモノレール、メリーゴーランドなどの遊具があるのも、最近の水族館では珍しい特徴。「三丁目の夕日」じゃありませんけど(^_^;;、ちょっと「古き良き昭和」の香り(“香り”と言うよりむしろ“匂い”かも。笑)がするのも楽しいところです。
  • 現在の「マリンピア松島水族館」は、耐震性などの問題から施設の建て替えの必要に迫られる一方で、その建て替え資金の調達が難しいことなどから、存続の危機に立たされているのだそうですが、それを知った地域住民の皆さんが「みんなで新しい松島水族館をつくろう!会」を作って、宮城県に対して、公的な支援と水族館の存続を訴えているのだとか。半年ちょっとの間に宮城県人口の1割にあたる20万人の署名が集まったということですから、周辺住民の皆さんから、いかに愛されているかが分かりますね。
    水族館の存続運動については、宮城県の06年度予算の中に50万円の調査費が計上されたという段階に過ぎませんので、今後どのような展開になるのかは分からないのですが、もし建て替えて新しい水族館が出来たとしても、今の水族館の温かみは是非、残しておいて欲しいものだと、強く思います。
  • 私は今回、仕事の出張帰りに寄り道しての見学だったため、多彩なイベントもほとんど見ることが出来ず、たいへん残念でした。いつかまた、ゆっくりと時間をとって再訪したいものです。
  • なお、2006年の夏休み前まで、松島水族館の公式サイトのトップページには、「重要」というアテンションを付けて、「カメ類を飼育されている保護者の方へ」というタイトルのメッセージが掲げられていました(08月時点では「お知らせ」の中に移動しています。)。
    これは、ミドリガメ(ミシシッピーアカミミガメ)が感染源と推定されるサルモネラ菌感染の報告があったことを受けて、2006年の03月に文部科学省が全国の教育委員会に対して、幼稚園・小学校での爬虫類飼育を控えるよう通達を出したことに対応したものですが、文部省の通達後、一部ではカメの飼育全てが非常に危険なことであると捉えるような、過剰な反応や誤解があったとも聞いています。カメ類がサルモネラ菌を保菌している可能性があることは何十年も前からの“常識”であったにも関わらず、今になってまるで責任逃れのように、形ばかりの通達を出すことで却って人々の不安感を煽っている文部科学省の無責任な態度には全く腹が立つばかりなのですが、このような事態に対して、水棲動物飼育の専門機関としての立場から、積極的に正しい情報発信をして行こうとする松島水族館の姿勢には、改めて頭が下がる思いがします。
   
写真で紹介(2006.03訪問)
 
マリンピア・松島水族館の正面入り口です。この写真は松島公園側からの写真。JR「松島海岸」駅はこの写真の右手にあり、「松島海岸」駅のホームからも、松島水族館内の遊具施設が見えます。道に迷うことはありません。
建物の壁面は一瞬「クジラか?」と思いますが、7色のサメですね(^_^;;。
チケットを買ってゲートをくぐると、そこは大きな屋根の下の遊園地の中庭広場。頭の上をモノレールが走っていきます。「あれ?オレ水族館に入ったつもりなんだけど…。」と思う瞬間(^_^;;。

でも確かに水族館ですからね。お間違いなく(笑)。
広場の中央に看板が立っていて、本日のイベント内容と時間の案内が掲示されています。「水族館裏方ガイドツアー」などの受付もこのプレートの横。
広場の真ん中に案内板が立っていますので、ちょっと見たところは垢抜けない感じもしますが、その代わり分かりやすさは抜群です。変に体裁を繕うよりも、むしろ、来館者に対してずっと親切なんじゃないかと思いますね。

この日は午前中、仙台で仕事を一つ片付けてから来ましたので、私が水族館に着いたのは午後3時前。ちょうど、「キングペンギンのお散歩」が終わった直後でした。残念(泣)。
イベント告知の看板の横には館内の「おもしろアクアラボ」の案内も。
「おもしろアクアラボ」では飼育員の方が様々な生き物の生態を説明してくれたり、実験を見せてくれたりするコーナーです。(詳しくはまた後ほど…笑)
ゲートの正面の突き当りにはペンギンプール(「ペンギンランド」)があります。中庭広場の回りをぐるっと一回りするモノレールからも、このペンギンプールを見下ろすことが出来ます。

モノレールに乗って見下ろすペンギンプール。ちょっと気になりますね。
(さすがの私も出張帰りの格好で一人では、モノレールに乗ることは出来ませんでした(^_^;;)

こちらのプールでは一日1回、ペンギンの給餌体験というイベントも行われているそうで、その告知のプレートが下がっていました。
このペンギンプールは前面のアクリルガラスの高さが低いのが特徴で、ガラスの上から簡単にプールの中を見下ろすことが出来ます。手を伸ばしたらペンギンに触れそうな高さなんですよ。

「給餌体験」も、プールの中に入るのではなく、このアクリルガラスの上から餌を投げ込むようです。
ただし、普段の時は、
「噛まれますので、絶対に手は出さないで下さい。」

気をつけましょう(笑)。
開放式のペンギンプールの右奥には、ちゃんと密閉されて空調が整えられた飼育室もあります。

この水族館では1991年に日本で始めてジェンツーペンギンの繁殖に成功して、日本動物園水族館協会(日動水)から「繁殖賞」を贈られているそうです。

イワトビペンギンの赤ちゃんもいました。
可愛いですね。

さて、「ペンギンランド」を見た後は、いよいよ建物の中に入った水族館見学をしますが、水族館棟の入り口は、中央の「広場」の左手奥。ちょっと地味ですね(^_^;;。

この入り口のさらに左手にはアシカショーのスタジアムがあるのですが、水族館棟の入り口もアシカショーのスタジアムも、モノレールのレールに隠れてちょっと目立ちません。
この辺は設備設計の古いところかなあ。遊園地の雰囲気は嫌いじゃないんですけど…。
建物に入ってすぐは「ジャングルゾーン」。熱帯性淡水魚のコーナーですね。ピラニアやピラルクーなど、魚種自体は比較的“お馴染み”なのですが…。
この展示は面白かったです。ピラニアの頭骨の標本。
ちょっとどこか南の国の少数民族の仮面みたいな感じ。もちろん、大きなアゴと鋭い歯とを、良く見てもらうための展示です。

そしてこちらにはピラニアの歯型と人間の歯型の比較。
頭骨の標本だけでもピラニアの歯の鋭さは分かりますが、人間の歯形と比べる(そして比べて触る)ことで、その鋭さが実感を伴って伝わる仕掛けです。ちょっとした工夫ですが、その効果の違いは大きい。「今まで見たこともない」とまでは言えませんが、良く出来ていると思います。

と言いつつ…。
しかしまあ、どなたのものかは存じませんが、人間の方の歯並びには若干問題があるなあ…(^_^;;。歯医者行った方が良いんじゃないすか?(笑)
こちらはエイの尾ビレのトゲの展示。
「エイの尾ビレにはトゲがあります。」というような説明は良く見かけますが、それだけでは一般の方は興味を持てません。こうして実物を間近に見せてあげることで初めて、知識が見学者に定着して行くのではないでしょうか。

正直、こうした細かい部分の展示までじっくり見て歩く来館者は少ないとは思いますが(^_^;;、水族館の訪問を「見物」で終わらせず、「見学」にまで深めるためには、非常に意義の有る展示だと思います。
「アマゾンの巨大魚」の水槽。
夕方、給餌の時間帯には、体長3メートルほど(?)のピラルクが、ものすごい音を立てて水面の餌を吸い込んでいました。まるで近くで爆弾が爆発したみたい。ビックリしました。

「世界最大の淡水魚のひとつ」と言われるピラルクの展示も、今ではさほど珍しくはなくなりましたが…
これは私も始めて見ました。ピラルクの舌骨(ぜっこつ)と、うろこの展示。

「水族館の展示」というのは水槽の「向こう側」にあるものと、我々はついつい思いがちですが、松島水族館では、その水槽の「向こう側」にあるものの一部を(しかも実物を)水槽の「こちら側」に取り出して来ることで、上手に水槽の「向こう側」の生体や生態へと、観覧者の興味・関心を引きつけています。

私は正直、この最初のコーナー(「ジャングルゾーン」)を見ただけで、すっかり興奮してしまいました(^_^;;
メガネカイマンです。
水中に半ば立ち上がるような姿勢のまま静止している姿がユーモラスで、人気者。

ただ、なぜメガネカイマンがこのような姿勢を取るのか、説明があれば、単に「面白〜い!」というだけのものには終わらなかったのかもしれませんね。

(でもホントに何故でしょう?水面に目と鼻だけ出して、“獲物”を狙っているのかな?(^_^;;)
こういう展示も面白かったです。「水草と魚」というタイトルのついた水槽で、魚と植物(水草)の相互の働き(食物連鎖−窒素循環−など)についての説明が掲示されています。

展示されている生体の個別の生態だけでなく、動植物の相互作用とか、環境全体に対して、見学者の視野を広げることにつながるのではないでしょうか。
館内のあちこちにこうした看板が掲示されていたのも感心したところです。

私などもしばしば、飼育員の方に質問したくなることがあるのですが、いざ声を掛けるのは勇気がいるものです。こうした掲示があると、見学者も声を掛けやすいですし、飼育員の方にとっても、見学者に対して積極的に説明していこうという意識を生み出すことができるでしょう。
「ジャングルゾーン」の後には、水槽ごとに個別のテーマを持つ「個水槽」のコーナーになります。これは「松島湾の魚」。やはり地元の海というのは、水族館展示の基本ですよね(笑)。

その他、「海の忍者(水ダコ)」「魚の擬態(オオカミウオやフサギンポなど)」「防波堤の生物(メバル)」「毒をもつ魚(アイゴやミノカサゴなど)」というように、様々なテーマの水槽が設置されて、それぞれに詳しい解説が付いていました。
水槽の上下に解説板が設置されていますので、水族館全体の説明板を読んでいくと、相当な情報量になります。
  そして、宮城県の特産といえばこれも外せません(笑)。ホヤの水槽。
全国のホヤの生産量の7割が宮城県産なんだそうですな。
アップでみるとこんな感じ。
実は私は水族館内を一通り見学した後、もう一度、この水槽を見に来ることになるのですが、その理由は後のお楽しみということで…(笑)。

「個水槽」の次にはラッコプール。
1日に4回ほど、給餌の時間が設けられているようです。

ラッコの名前や年齢が掲示されているだけでなく、「出産と育児」など、解説が充実しているのが松島水族館らしいところ(笑)。
この日はちょうど、どこかのTVの撮影があったようです。
飼育員の方から手渡しで餌をもらうしぐさが可愛いですね。
ラッコ水槽の次には「海のふしぎ館」ということで、「魚の発音(音を出す魚)」など、海洋生物の意外な生態に焦点を当てた個別水槽のコーナーが続きます。

その「海の不思議コーナー」に展示されているミズクラゲと、右側に見えるのはポリプを点けたアクリル板。
暗い水槽内でクラゲとポリプが光っているのは、ちょっと宇宙空間みたいですね(行ったことないけど。笑)

東宝怪獣映画の「宇宙大怪獣ドゴラ」ってのは、こういうところから発想されたのかもねぇ…。

この他にも、アカクラゲ、シロクラゲ、エイレネクラゲ、サカサクラゲなど、沢山のクラゲが展示されていました。
いわゆる「マイクロ・アクアリウム」もあります。「クローズアップコーナー」。
(後ろからストロボ焚いてゴメンナサイネ。笑)

イソギンチャクなどをアップで観察することが出来ます。
そしてこちらが「黒潮の海」。八角形の大型水槽です。
ツバメウオや回遊性の大型アジなどが入っています。

ただ、今流行の大型水族館の水槽と比べると、やはり水槽の大きさではかなわないですね。

水槽越しに向こう側の見学者の姿が見えるところもご愛嬌かな(笑)。

水槽内にはトビエイなど、エイの仲間も泳いでいます。

この水槽ではいわゆる「マリンガールの餌付けショー」のようなイベントは行われていない様子です。
そしてここでもこのように、充実した解説。
このような手書きの解説ボードも、館内のあちこちで見ることが出来ます。
2Fに上がるとイロワケイルカの水槽と、その向かい合わせに「希少生物コーナー」があります。

奥にはデンキウナギの発電実験の水槽が置かれているのも見えますね。
イロワケイルカは“パンダイルカ”という愛称でも知られているイルカですが、日本では初めて繁殖ら成功したのは、この松島水族館なのだそうです。

さすがに繁殖情報が充実していますね。“イルカ好き”にはたまらない情報かもしれません。
そのイロワケイルカのとなりにはマンボウの水槽。
マンボウ水槽の横にも、マンボウの稚魚の成長(変態)の解説パネルがあります。
マンボウの子供って、こんな、星砂みたいな形なんですね。知りませんでした。
最近は水族館でマンボウが飼育されていること事態はさほど珍しくもなくなりましたが、このような標本はあまり眼にしないのではないでしょうか。マンボウの幼体の標本。
こうした展示も、「松島水族館ならでは」と、強く感じます。

イロワケイルカ水槽の向かい側の「希少生物コーナー」。

水族館の広さを考えると、この「希少生物コーナー」は非常に充実していると言えるでしょう。「希少生物」というテーマをこれほど大きく打ち出した展示は、他の水族館では余り記憶がありません。

犬・猫のような愛玩動物以外の生物を飼育している人間が避けて通ることが出来ない、「CITES(サイテス)」の説明。
(サイテスについてよくご存知でないかたは、これを機会にぜひ勉強して下さい。→ http://ja.wikipedia.org/wiki/CITES

しかしサイテスについて、水族館の中でこれほどきちんと説明してある展示は珍しいですよね。この辺りも私的には大幅に好感度アップの要因です(笑)。

私が何年も沖縄に通いながら、ついぞ目にすることが叶わずにいたセマルハコガメ。こんなところでご対面するとは…(苦笑)。

水族館のような場所は少なくとも、ある程度は生き物が好きな人々が集まる場所なのですから、他の水族館でも、このようなサイテスの説明などはもっともっと、充実されて然るべきではないかと思います。
2Fの最後は「サメ・エイの仲間」と、この水槽はその向かい側の「サンゴの海」。

「サンゴの海」と言うとチョウチョウウオなどの派手な魚が一般的な気がするのですが、ここではニザダイやハギの仲間が中心。「サンゴの海」にしては、ちょっと地味じゃないですかね(^_^;;。

(ま、そこがまた何とも言えない、この水族館らしい“味”でもあるわけですが…。笑)
3Fはマリンガーデン。海洋無脊椎動物のコーナーです。

最近はサンゴなど、海の無脊椎動物を飼育している水族館は珍しくなくなりましたが、こんな風に「無脊椎動物コーナー」として独立しているのは、やはり珍しい気がします。

この松島水族館、決して大きな水族館ではないのですが、展示内容は非常にバラエティに富んでいて、幅も広く、また奥行きも深いものでした。
好日性サンゴの水槽。
飼育生態自体はそんなに珍しいものではありませんが、説明パネルには「サンゴは動物ですか植物ですか?」と書かれ、見学者に問いかけをしています。今も一般には、植物と考えている人が少なくないんじゃないですかね。

好日性サンゴ水槽の中にいたハタタテハゼ。これも全く珍しくないですが、好きな生体なので…(^_^;;。
こちらは「光を栄養にする生き物」というテーマの水槽。立派なヒレシャコガイがいますね。説明パネルの中では「褐虫藻(ズーキサンテラ)」なんてことばも使われています。

ただちょっと不思議なのは、水槽の真ん中にウミサボテンがいること。ウミサボテンって、日中は砂の中に埋まっているのが普通だと思っていましたが…。好日性のウミサボテンなんてのもいるのかな?飼育員の人に聞いてみれば良かったな(^_^;;。

この他にもお馴染みのイソギンチャクとクマノミの共生水槽なども、このコーナーに展示されています。

で、こちらが水族館棟の最後のコーナー「おもしろアクアラボ」。
「水中のガンマン」ということで、テッポウウオを取り上げていました。
(実はこの時、もう16時すぎ。実験の定刻は過ぎていたのですが、小さなお子さんがいたので、特別にもう一度見せてくれた様子です。サービス良いですね。笑)

飼育員の方がエサのイサザアミを指につけて水槽にかざすと、水槽の中のテッポウエビが口から水を噴射して、イサザアミを打ち落とそうとします。この“水鉄砲”は、2m以上の高さまで届くのだそうです。稀には魚自身がジャンプすることもあるそうですよ。

ただし、打ち落とした魚自身が餌を獲得できるとは限らないのだそうで、中には他の魚が落とした餌を横取りしてしまう“ちゃっかり者”もいるとか。魚の世界も世知辛いですな(笑)。

この水族館には大きなタッチプールはないようなのですが、その代わりが「かんさつ水槽」です。(「観察水槽」ではなくて「かんさつ水槽」ね。笑)飼育員の方の説明を聞きながら、生体に触ることが出来ます。

で、そこで教えてもらったのが…

これ。ホヤの出水管と入水管。

“口”が閉じられた時に「+」の形になるのが入水管で、「−」の形になるのが出水管なんですって!
知りませんでした(^_^;;。

「口を開いている状態でも分かりますよ。」と言われて、良く見れば「なるほど」。
それで、私はまた水族館の入り口近くに戻って、「養殖」のホヤの水槽を見に行ったのでした(笑)。

飼育員の方はちゃんと、ホヤがナマコなどとは違う脊索動物であり、幼生に脊索があることなども説明してくれます。ただの“案内係りのお姉さん”ではありません(笑)。

カウンターの奥にはいくつかの標本や図鑑なども置かれていました。子供達から質問を受けて、実物をここで見せられない時などに、これらの標本や図鑑を使って説明して下さるのだそうです。
(例えば「ヤドカリの貝殻の中はどうなってるの?」と質問された時など。)

自分で自由に触れるタッチプールもよいですが、こんな風に、専門的な知識を持った飼育員の人に説明してもらいながら、色々な生き物に触れられるというのは、非常に良いことですね。ここで飼育員の方の説明を聞かせてもらった子供たちは、幸せだと思います。

「アクアラボ」を過ぎて建物の外に出ると、そこはアシカのショースタジアムの2階席になります。ショーの内容は「アシカのドタバタ診療所」。4匹のアシカがお客様の笑いを誘っていました。

その2階席からは、松島湾を眺めることが出来ます。良い眺めです。

振り返れば日没も近づいて人影もまばらになった中央広場。
モノレールの青いレールに囲まれて、左手にペンギンプール、画面の奥が乗り物コーナーです。

最近の水族館にはないレイアウトですし、もし松島水族館が新しく建て替えられたら、もうこんな広場は残らないのかもしれませんけれども、ちょっと“味”のある雰囲気ですよね。私はこういう雰囲気も好きです。

帰りがけ、記念写真の看板の裏側に、こんなプレートが貼り付けてあることに気づきました。
細かな心遣い。「これも松島水族館らしさの一つだなあ。」と思います。

〜 ちょっと番外編 〜

水族館を出て、日没まで僅かに時間がありましたので、松島海岸を散歩。雄島に渡りました。

この雄島は「松島」という地名の発祥の地で、松尾芭蕉も訪れた場所です。かつては全島が霊場だったそうで、今も小さな島の中に50ヶ所以上の岩窟が残り、卒塔婆・仏像・五輪塔などが安置されています。

雄島に残されている岩窟と卒塔婆など。
かつてはこの雄島全体で、ちょうど108の岩窟があったとか。

対岸の松島公園の奥には民謡「斉太郎節(大漁唄い込み)」でも有名な瑞巌寺があり、この時には既に閉門時間を過ぎていましたので訪れることが出来ませんでしたが、雄島・瑞巌寺とも、独特の雰囲気のある場所で、是非また、ゆっくりと再訪したいものです。

松島公園から見たマリンピア・松島水族館。
こうした素晴らしい水族館が、今後とも長く存続できるよう、願わずにはいられません。

そうそう、仙台に帰ろうとして気づいたのですが、最寄のJR仙石線「松島海岸駅」で、松島水族館の割引入場券を売っていたのでした。先に知っていればねぇ…(^_^;;。

皆様も来訪の際には是非ご利用を(笑)。
   
まとめてひとこと
 
  • 「水族館は箱より中身。ハードよりソフト。」という見本のような水族館。
  • 建物の古さ・狭さも、ここまで来ればひとつの“味”かも。
  • 狭い中でも展示や解説は充実。展示・解説を通じて得られる情報量は膨大です。
  • お客様を楽しませるための「プログラム」も良いけれど、何より素晴らしいのは職員の方たちの「ホスピタリティ」。その意味ではやはり、「水族館は人。」なのかもしれませんね。
  • システムやマニュアルが整えられた“巨大水族館”とは一味も二味も違う、でもこれもまたとっても味わい深い水族館。魅力的な水族館です。

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