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素人の素人による素人のための八重山民謡ガイド[3]

弥勒節&やらよう節
(みるくぶし・やらようぶし)

2007.02.11 UP

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実際に先生に習っているわけでもありませんし、沢山の本を読んだわけでもないので、
本来、とても他人様に八重山民謡を解説できるほどの知識は持たない私ですが、
もちろん私よりももっと知らない人もいるわけで、そういう方のために、
私が知っている限りの知識で八重山民謡の紹介をします。
これから八重山民謡を聞いてみようという時に、少しは参考にしてもらえるとありがたいです。

でも所詮素人の聞きかじりなので、かなりの間違いや思い違いがあると思いますが、
そんな時は堪忍して下さいね。

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沖縄(=沖縄本島地方)で宴会の“締め”はカチャーシですよね。皆で立ちあがってカチャーシして解散。
ところが八重山では、沖縄の「カチャーシ」に相当する「モーヤー」の後、お客様を送り出す間に唄われる曲があります。それがこの「弥勒節(みるくぶし)」と「やらよう節」です。(「弥勒節」→「やらよう節」と、区切れなく、続けて唄う。)「まあ、『蛍の光』みたいなもんだ。」と言う人もいますね(笑)。

「みるく(弥勒)」というのは、元々は仏教の弥勒菩薩のことですが、東南アジア→中国・台湾と伝播するうちに変貌を遂げ、沖縄文化圏独特の「ニライカナイ(ニーラスクなどとも)信仰」と習合した結果、八独自の「みるく信仰」が出来あがりました。この辺の詳しい事情は大変面白いので、是非、こちらのサイトを見ていただきたいのですが、その「みるく信仰」をベースとした「弥勒節」(および「やらよう節」)の歌詞の意味は、おおよそ、

大国(文字通りタイとも、中国とも、ヴェトナムとも、諸説あり)の
弥勒神が我が島に来てくれて、
弥勒世(みるくゆ=豊かで幸福な時代・豊かで幸福な社会)が訪れた。
嬉しい、ありがたや、唄い踊ろう。

 
(以上が「弥勒節」。以下「やらよう節」)

今日は良い日だ。幸せだ。黄金の日だ。

というように、非常にお目出度い内容になっています。
また、この「弥勒節」は、沖縄(=沖縄本島地方)では、「赤田首里殿内(あかたすぅいどぅんち)」)という名前で、子供をあやす際に唄う童歌として広く唄われています(歌詞と旋律はかなり弥勒節とは異なっており、ちょっと分かり難いですが。)。本家八重山の「みるく(弥勒)」も、必ず、子供を連れた姿で現れますので、弥勒と子供との深い関係を想像させますね。

で、その「弥勒節(&やらよう節)」ですが、実際に聞いてみると、単に宴会のお開きにふさわしい、しっとりとした曲というだけではなくて、やはり元々が神様の歌ですから、非常に神々しく、荘重な感じのする曲です。やはり「海の向うからきた神様」だけあって、時間的、空間的な広がりを感じさせる、スケールの大きな曲であると思います。大海原から昇る朝日を見た時に、思わず神妙な気持ちになって手を合わせてしまうような、そういう、何か神聖な気持ちにもさせてくれます。また特に「やらよう節」の「ヨー、ヤラヨー」という囃子の部分は、ちょっと日本の雅楽と共通する感じの節回しなんかもあって、聞いているだけでも気持ちよくなりますよ。

そんな「弥勒節〜やらよう節」の魅力を堪能するには、八重山民謡界随一の美声・宮良康正のCDが良いと思います。また既に全く「八重山民謡の弥勒節」ではなくなっていますが、八重山民謡界の風雲児・大工哲弘のCDの中にも、現代風にアレンジされた「弥勒節〜やらよう節」がインストゥルメンタルで「イリヌミルク」として収録されており、ちょっと面白い“味”だと思います。
さらに、八重山民謡界の首領(ドン)・山里勇吉と、沖縄民謡の不世出の「風狂の唄者」嘉手苅林昌が競演した「うたあわせ」では、山里勇吉の「弥勒節〜ヤラヨウ節」と嘉手苅林昌の「赤田首里殿内」の両方を聞き比べる事が出来ますので、八重山民謡と沖縄民謡の違いに興味がある人には、面白いかもしれないですね。

【お勧めCD】

  CD名 歌手名 レコード会社 商品番号
沖縄の民謡9〜八重山古典民謡<2> 宮良康正 キングレコード KICH-199
蓬莱行 大工哲弘 オフノート ON-43
うたあわせ 嘉手苅林昌
山里勇吉
B/Cレコード BCD-6XY

私はまだこの歌を三線で引く事は出来ないのですが、お風呂の中などで唄っているとついつい気持ち良くなり、声が大きくなって家族に迷惑がられます(苦笑)。

なお、八重山民謡の曲名や読み方の表記は、人により、CDにより、楽譜(工工四)により、必ずしも統一されていないのが現状です。
このページで採用している表記以外の表記も多いと思いますが、ご容赦下さい。

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