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素人の素人による素人のための八重山民謡ガイド[5]

デンサー節
(でんさーぶし)

2004.03.07 UP

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実際に先生に習っているわけでもありませんし、沢山の本を読んだわけでもないので、
本来、、とても他人様に八重山民謡を解説できるほどの知識は持たない私ですが、
もちろん私よりももっと知らない人もいるわけで、そういう方のために、
私が知っている限りの知識で八重山民謡の紹介をします。
これから八重山民謡を聞いてみようという時に、少しは参考にしてもらえるとありがたいです。

でも所詮素人の聞きかじりなので、かなりの間違いや思い違いがあると思いますが、
そんな時は堪忍して下さいね。

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「デンサー節」(「デンサ節」でも「でんさー節」でも「でんさ節」良いのですが)は、今のところ(2004年03月現在)、私が唯一、唄三線でちゃんと歌える(と本人は思っている…笑)八重山民謡です。(2年かかって、やっと1曲…(^_^;;)

沖縄民謡の「てぃんさぐの花」、宮古民謡の「なりやまあやぐ」と並んで沖縄の「三大教訓唄」である、という解説を見たことがありますが、親しみ易いメロディーで、沖縄民謡にも取り入れられ、「沖縄民謡のデンサー節」や「揚(あぎ)デンサー節」「新デンサ節」など、様々なバリエーション(と言うのかどうか…?)も産み出されています。

「デンサー」については、「伝旨」という意味だと解説されている方もおり、「昔から〇〇と言われているよ」というような意味だそうです。もともとは西表島の上原集落の与人(=役人)であった宮良里賢が、1768年に、人々が心を合わせて仲良く暮らしていけるよう、作詞作曲した唄です。

島持つぃどぅ家持つぃ 船乗るぃどぅ 同物(ゆぬもぬ)でん 
船頭舟子(しどぅふなぐ) 親子(うやふぁー) 揃らにばならぬ デンサー

島を治めるのも、家を治めるのも、船を持つのも、同じことだ
船頭と舟子、親と子が、揃って力を合わせなければならないと、
昔から言い伝えられているよ

というように、本来は非常に具体的で、直接的な内容の歌詞が続くのですが、八重山では一番の歌詞として

上原(ういばる)ぬデンサー 昔からぬデンサー
我ぬ心(ばんくくる)言ざば 聞(すぃ)きゆ給(たぼ)り デンサー

上原村に伝わるデンサー節 昔から伝わるデンサー節にのせて、
私の心を唄います。どうぞお聞き下さい

と唄い出した後、伝統的な歌詞ばかりではなく、その場その場の状況に合わせて、相応しい歌詞を選び、また自分で作詞して歌うということが行われて来たとのことです。(結果「沖縄民謡のデンサー節」では教訓歌としての側面はかなり薄らいで、むしろ恋の歌になっているそうな。私は良く知らないのですが。)
2003年にNHKで放送された「ちゅらさん2」の最終回に、八重山民謡界の重鎮、山里勇吉が登場して(オバァの恋人役)、「私は口下手ですので、私の気持ちを込めた歌を唄います。」と言って唄ったのがこの「デンサー節」でした。まことに相応しい唄でしたね。

西表島の上原集落には「デンサ節」の歌碑があり、毎年、秋に「デンサ節大会」が行われています。歌唱の優劣を競う他に、最近では「作詞の部」も作られて、毎年ますます、新しい歌詞が産み出されるようになっているそうです。
「安里屋ユンタ」などと同じく、上原の「デンサ節」は私が覚えた「八重山民謡のデンサー節」とは少し違うらしいので、私も一度聞きに行きたいものだと思っています。

さてその「デンサー節」のお奨めですが…。
まずは、大工哲弘がちょっと張りが緩い(ように、私には聞こえる)三線で、訥々と唄う「デンサー節」をお奨めしておきましょう。2番以降、八重山の伝統的な歌詞とは異なりますが、故郷を遠く離れた東京で、友人達のお陰で唄う事が出来る、と言う大工哲弘の心情には、同じく故郷を離れて東京で暮らす身として、深く共感するものがあります。

それから、その同じ大工哲弘が1970年代に録音したCDも発売されています。20代の大工哲弘の、若々しくて少し力が入った感じの「デンサー節」を聞くことが出来ます。この大工哲弘と言う人は、自身のホームページのタイトルを「でんさー通心」としているくらいですから、きっとこの曲が好きなのでしょうね。色々なCDで唄っていますから、同じ大工哲弘の「デンサー節」でも、色々なバージョンを楽しむ事が出来ます。それぞれに少しずつ歌詞が異なっていたりしますから、それらのバージョンの違いを聞き比べてみるのも面白いでしょう。
それから、大工哲弘の師匠である山里勇吉と嘉手刈林昌が競演したCDでは、山里の歌う「八重山民謡のデンサー節」と、嘉手刈が唄う「沖縄民謡のデンサー節」を聞き比べる事も出来ます。確かに同じ曲だけれども、これもまた確かに違う曲になっていて、中々楽しめると思います。

【お勧めCD】

  CD名 歌手名 レコード会社 商品番号
大工哲弘 大工哲弘 オフノート ON-5
八重山民謡集 大工哲弘 ビクター OCD-1000
うたあわせ 嘉手苅林昌
山里勇吉
B/Cレコード BCD-6XY

私もそのうち、自分で作詞できるようになりたいものですが、まず八重山方言を話せるようにならないといけませんので…。棺桶に入るまでには一曲くらい作れますかねぇ(笑)。

なお、八重山民謡の曲名や読み方の表記は、人により、CDにより、楽譜(工工四)により、必ずしも統一されていないのが現状です。
このページで採用している表記以外の表記も多いと思いますが、ご容赦下さい。

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