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『国際サンゴ礁年2008』に向けての提言(2)

マリンアクアリウムに関係する皆様に対する
弊サイトからの具体的なお願い

(2007.06.19)

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こちらのページでは、

ホビーマリンアクアリストの皆様
マリンアクアリウム業界関係者の皆様
環境省/事務局や政府・行政の皆様
マスコミ・報道関係者の皆様


のそれぞれに対して、弊サイトから
『国際サンゴ礁年2008』に向けての提言」を具体化するための、
勝手なお願いを掲載します。

内容はあくまでも私・放蕩息子の“勝手なお願い”に過ぎませんから、
これが本当にサンゴ礁の保全に役立つのかどうか、保障は出来ませんが(^_^;;、
マリンアクアリウムに関係する皆様が、今後、

『国際サンゴ礁年2008』を契機にサンゴ礁保全を考えようとする時に、
少しでも参考になれば幸いです。

ホビーマリンアクアリストの皆様へのお願い
 
     
まずは飼育スキルの向上を
   


あなたは今までに、どれくらいの魚や無脊椎動物を殺して来ましたか?
その中に、あなたの知識や飼育スキルが足りないために殺してしまった魚や、無脊椎動物は居ませんでしたか?
あなたが違う飼い方をしたり、あなた以外の人間に飼われていたら、死なずにすんだ生体はいませんでしたか?

サンゴ礁保全を考える場合にも、私たち飼育者がまず最初に努力しなければならないことは、自分が飼育する生体の健康を維持し、可能な限り長生きさせることなのではないでしょうか。飼育のための知識やスキルや努力が足りないために、死ななくても良いはずの生体を殺してしまったら、それは貴重な野生生物の生命を一つ無駄に失ったことになりますし、死んだ生体を補充するために別の生体を購入したり採取したりすれば、それはまた一つ、貴重な自然環境の破壊を重ねることになるからです。

飼育を一切やめてしまうのであれば話は別でしょうけれども、私たちは何よりもまず飼育者なのですから、飼育を続ける限り、知識の収集&蓄積に勤め、スキル向上の努力を続けることから始めましょう。
それは回りまわって確実に、サンゴ礁の自然環境への負荷を軽減することに繋がるはずですし、そのようにして開発され、蓄えられたサンゴ礁生物の飼育ノウハウは、サンゴ礁生態系の保全のために活用できる知的資源だと思います。サンゴ礁の生物が健康に生活するためには何が必要なのかを知り、広め、サンゴ礁生態系の保全に活用して行く努力を始めましょう。

     
アクアリウム産業・アクアリウム業界の問題点に関する情報収集と勉強を
   


そもそもあなたは、あなたが飼育している海水魚や無脊椎動物のほとんどが、自然の海から採取されてきた「野生生物」であり、人間が養殖した飼育用品種や家畜、愛玩動物などとは異なることを理解していますか?
だからこそ、マリンアクアリウムという趣味は多かれ少なかれ、どこかの海の自然環境の直接的な破壊を伴わざるを得ないのだということを認識していますか?

さらにあなたは、サンゴ礁域での魚や無脊椎動物の過剰な採集が、サンゴ礁の生態系にどのような影響を与えるかを考えたことがありますか?
そして我が国をはじめとする多くの国のサンゴ礁海域で、既に“乱獲”と呼ぶべき過剰な観賞魚採集が行なわれて来ていることを知っていますか?
あなたが飼育している生体が、そうして採集されたものかもしれないと考えたことがありますか?

そしてさらに、生態系に決定的なダメージを与える薬物(シアン等)を使った採取などの破壊的採取活動が、世界の海で今、現在も行なわれていることを知っていましたか?
薬物採取の確認が困難で、薬物採取された個体もそうでない個体も区別出来ない状態で、同じように我が国の店頭に並べられ、(知らん顔で?)販売されていることを知っていましたか?
そしてあなたが購入した生体があなたの自宅の水槽に入るまでに、その何倍もの数の生体が自然の海で無駄に殺され、採集業者のストック水槽や輸送途中の袋の中や販売店の水槽で死に、単なる「生ゴミ」として空しく廃棄されているか、その数を想像してみたことがありますか?

単なる消費者に過ぎず、“お客様”に過ぎない私たちが、マリンアクアリウム産業の実態や問題点を詳しく知ることは難しいことですよね。しかし、マリンアクアリウムが野生の海水魚や無脊椎動物という「自然資源」の採取を基盤とする趣味であることを考えれば、その産業が(石油産業や鉱業などと同様に?)、自然破壊や環境汚染を引き起しやすく、また大量の「隠れたフロー」を生み出しやすい産業であることは、容易に理解できるのではないでしょうか。

          隠れたフロー            
            資源採取等に伴い、直接利用される資源以外に付随的に採取・掘削されたり、又は廃棄物等として排出される物質のこと。例えば、金属資源の採掘に伴って掘削される表土や岩石などが代表。ごく僅かな金属資源を採取するために、利用される金属資源の数十倍にのぼる大量の表土や岩石が掘削され、廃棄物として捨てられる。            

さらに、マリンアクアリウム産業が(石油産業や鉱業のような「素材産業」ではなく)、生体という最終消費財を直接供給する「消費財産業」であることを考えると、マリンアクアリウム産業や業界の動向に対する私たち飼育者=消費者の責任は、決定的に重要なものだと言わざるを得ません。私たち飼育者=消費者は、生体の購入代金を支払うことでこの産業や業界を直接支えている、最も主要なステークホルダー(利害関係者)なのですから、この産業・業界の問題点に対しても、「知らなかった。」で済ましてはいけないと思うのです。

私たちは「責任ある飼育者」、そして「責任ある消費者」になるために、現在のマリンアクアリウム産業や業界が抱えている多くの問題に強い関心を持ち、学習し、また業界の関係者に対しても、必要な情報の公開を求めて行きましょう。私たち消費者が、この産業や業界の問題点を学び、公けの場に引き出して議論することで初めて、マリンアクアリウム産業や業界から不公正な取引や破壊的な採取などを排除することが可能になるはずです。

     
適正なコストの負担で、良心的な事業者の支援を
   


あなたはあなたが飼っている魚をあなたが買うまでに、どれほどのコストが掛かっているか、考えたことがありますか?
採取のコスト、移動のコスト、ストックのコスト、販売のコスト、採取から販売完了するまでの飼育のコスト、etc…。
それらのコストをあなたなりに想像した時に、あなたがその魚を買った価格は妥当なものだと思えますか?その価格で販売できるのであれば、自分も海水魚採取・販売の事業を手掛けてみたいと思えますか?

そしてもし、生体の価格があなたの想像以上に安いものだったとしたら、なぜそんなに安く販売出来るのか、購入できるのか、考えてみたことがありますか?
採取から販売までの間で、誰が何を行なっているからこそ、そんなに安価な価格設定が出来るのか、想像したことがありますか?

もしあなたが常識で想像出来ないほど安価な価格で生体が販売されていたとしたら、そこには必ず理由(もしくは「カラクリ」?)があるはずです。そしてその「カラクリ」は、残念ですが、不公平な契約や不正な取引、あるいは違法な行為などであり、(例えばサンゴ礁海域における薬物採取のように)自然や生態系の破壊、環境の汚染などを伴っている場合がほとんどです。途中の業者や私たち消費者自身が、本来はそれぞれが負担すべき環境負荷軽減のためのコストを負担せず、サンゴ礁の自然環境やそこに暮らす地域の人々に一方的に押し付けているからこそ、私たちは私たちの常識以上に安く、望む魚を入手することが出来るのです。
(これは産業廃棄物の不法投棄などにも共通する構造で、環境保全コストの「外部化」による価格圧縮の一例です。)

しかしこのような不当な低価格販売が、長く維持・持続できる“真っ当な”経済活動であるはずがありません。それはサンゴ礁の自然環境に決定的なダメージを与えると同時に、マリンアクアリウム産業全体の健全性・透明性をも損ない、産業自体の衰退を招く行為でもあります。マリンアクアリウムが持続可能な産業として自立し、またその基盤となるサンゴ礁の自然環境がいつまでも健全に維持されるために、私たちはエンドユーザーである自分自身の責任を自覚して、環境保全に必要なコストを積極的に負担して行きましょう。マリンアクアリウムにおけるグリーン購入・グリーン調達です。

確かに、「(同じ生体であれば)少しでも安く購入したい。」と考えるのは、消費者としては無理からぬことかもしれません。しかし私たち最終消費者が自ら進んで必要なコストを負担しなければ、サンゴ礁の現場で自然の海から生体を採集する事業者の皆さんも、環境負荷の軽減にコストを掛けた事業展開は行えないのです。
ですから、もし私たちが目先の利益を優先して、不公正な手段で価格を抑制した安売りの生体の購入を続けるとすれば、私たちは私たち自身の手で良心的な事業者を苦境に陥れ、逆に悪徳な事業者ばかりが栄える、いわゆる「悪貨が良貨を駆逐する」状況を招くでしょう。その時には、私たちはもはや“被害者”とは言えません。私たち自身が、自然環境とアクアリウム産業を破壊する悪徳事業者の活動に加担した共犯者であり、“加害者”となってしまうのではないでしょうか。

アクアリウム業界やアクアリウム産業全体が、サンゴ礁生態系の健全な保全について責任ある業界となり、責任ある産業となるために、まず私たち消費者が率先して、「責任ある消費者(Responsible Consumer)」になり、必要なコストの負担を引き受けましょう。私たちはもはや、利己的な価格至上主義・経済的利益至上主義の態度を改めるべき場所に立っていると思います。

     
サンゴ礁の生物と生態系の素晴らしさの“伝道”を
   


サンゴ礁の生き物や海水魚の飼育を始めて、あなたは驚いたことはありませんでしたか?不思議に思ったことはありませんでしたか?「すごいなあ。」と、感心したことはありませんでしたか?
あなたがサンゴ礁の生き物や海水魚飼育を始めて驚いたり、不思議に思ったり、感心したことで、あなたはますます、海の生き物が好きになりませんでしたか?
海の生き物のことを、もっともっと知りたいと感じたりししませんでしたか?

そしてあなたの周りを見渡せば、あなたの周りにもまだ、あなたが感じた驚きや不思議や感動を知らない人がいるのではありませんか?
あなたがそれを教えてあげたら、あなたと同じような驚きや不思議や感動を感じることが出来る人が、あなたの周りにもまだまだ、沢山いるのではありませんか?

私は以前から、「水槽は自然の海へと繋がる“窓”だ」と主張しています。その“窓”は飼育者であるあなたの視線と意識とを、自然の海や生態系の精緻や生命の不思議、その素晴らしさの自覚へと導いてくれるはずですが、もしあなたが自然の海やサンゴ礁の生態系を素晴らしいと思い、それを掛け替えのない価値のあるものだと感じたならば、今度は是非、あなたの周囲に生活する人々に向けてもその、あなたの知った美しさや素晴らしさ、掛け替えのなさを伝えて欲しいと思います。(そしてもし可能であれば、その自然の海やサンゴ礁の生態系が、今や破壊の危機に瀕しているという事実まで伝えられれば完璧です。)

あなたが開いた自然の海への“窓”を、是非、あなたの周囲の人々に向けても開いてあげて欲しいのです。

私たち都会に暮らす者の日常は、自然の海やサンゴ礁から、とてつもなく遠く隔てられています。それゆえ、私たちの日々の暮らしの中には、自然の海やサンゴ礁の素晴らしさを感じ、その掛け替えのなさや危機の深刻さに思いをめぐらすチャンスが足りません。

ところがマリンアクアリストは、自然の海やサンゴ礁から遠く離れた都市の中に居ながらにして自然の海の素晴らしさや面白さを感じることが出来る稀有な存在なのですから、私たちは自分が感じた不思議さや喜びを、私たちの周囲に暮らす人々にも積極的に分かち合っていきましょう。
そんなあなたの言葉や態度や、あなたが手を掛けた水槽の生物に接することで、一人でも二人でも、自然の海に興味を持ち、サンゴ礁の保全に感心を抱く人が現れたとしたら、それは立派な、サンゴ礁の自然環境の保全活動なのだと、私は思います。

     
都市生活者の限界の認識を
そしてそれぞれの立場で可能なフィールド活動と、その支援を
   
最後に、都市に暮らす飼育者であり、消費者である私たちが、自らフィールドへと出かけ、サンゴ礁の保全活動に直接的に参加することは、非常に素晴らしい事ではあるのですが、そこには自ずと限界があることも認識しておきましょう。

もちろん、フィールドに出て自然の動植物に触れることは、環境破壊の現状を知り、自らの責任に気づく絶好の機会です。
ですから私も、出来るだけ多くの皆さんが、機会を捉えて現場に出ることが出来れば良いと考えてはいるのですが、遠く離れた都会に住む私たちが年に数回程度、フィールドに出て活動するくらいでは、環境保全の実効を上げることなどは出来ないのだということもまた、明確に認識しておかなければならない、これは「事実」だと思います。だってそれくらいのことでサンゴ礁の自然環境と生態系が守れるのであれば、誰も苦労はしないのですからね。

最初からそんなに簡単なことではありませんし、都市に暮らす私たち“素人”が、安易に「サンゴ礁保全のために」フィールドに出て活動すれば、それはしばしば、サンゴ礁の保全には結びつかず、却って“善意による自然破壊”を進めることにもなりかねません。
          この“善意による自然破壊”の典型が、「愛好者による人工繁殖クマノミの安易な自然放流」であり、弊サイトでも以前から問題提起している、重要なテーマです。→「続・放流について〜“ニモ”放流への私的評価と提言〜」を参照            

それよりもむしろ、私たちがサンゴ礁の保全活動に直接参加することは、自然環境の現状と自らの責任について学ぶ学習の機会なのであり、何よりも「自分自身のため」なのだということを、明確に認識しておくべきではないでしょうか。年に数回ばかり、フィールドに出て“活動”することだけで「サンゴ礁が守れる」などと考えるのは、私は私たちの“傲慢”ではないかと思いますよ。
それよりも、私たち都会に暮らす者は、サンゴ礁域に生活する地域の方々や漁業者の方々の協力を得て、サンゴ礁の実情を勉強させてもらい、その勉強=体験から得られた知見を元に、翻って日々の都市生活の中で、自分自身はどんな活動を継続して行くうべきか、一人一人が自分のこととして考えることが大切なはずです。

そうして考えた結果としてサンゴ礁保全のために私たちが日常的に行なう活動は、直接的には「サンゴ礁保全活動」に見えなくても良いのではないでしょうか。それは日々のゴミの分別であるかもしれませんし、温暖化ガスを抑制するための省エネ活動かもしれませんし、あるいは直接的な「サンゴ礁保全活動」を行なっている団体や事業者に対する経済的な援助や寄付であるかもしれません。または(私がこうして行なっているように)、WEB上で他の人々に何らかの呼びかけを行なうこともまた、「その中の一つ」に数えられるかもしれませんね。

     
   

弊サイトが考える「持続可能なサンゴ礁保全活動」の枠組み

   

     
    自分が実際に身体を動かして、直接フィールドの最前線で活動することだけが「サンゴ礁の保全活動」ではないはずです。実際の現場でサンゴ礁の保全活動を行っている人を支援したり、そうした“最前線の人々たち”が活動を続けやすく、活発に行いやすいように、周囲の環境を整えてあげることもまた、立派な「サンゴ礁の保全活動」だと、認識しましょう。
   
マリンアクアリウム業界関係者の皆様へのお願い
 
鋭意作成中です。もう少々、お待ち下さい。
基本的には、私たち、消費者/飼育者と連携の上で、
 1.より積極的な情報開示
 2.信頼できる業界団体の設立
 3.独自の環境ラベルの導入

などのお願いをして行きたいと考えています。
   
環境省/事務局や政府・行政の皆様へのお願い
 
鋭意作成中です。もう少々、お待ち下さい。
基本的には、
 1.アクアリウム業界への呼びかけの強化
 2.他の省庁との連携の強化
 3.法制度の充実・整備

などのお願いをして行きたいと考えています。
   
マスコミ・報道関係者の皆様へのお願い
 
鋭意作成中です。もう少々、お待ち下さい。
 1.サンゴ礁の危機に関する報道の充実
 2.“気分”や“ムード”に流されない、冷静な報道

などのお願いをして行きたいと考えています。



『国際サンゴ礁年2008』がマリンアクアリウムの世界にとっても有意義なものとなり、
マリンアクアリウム産業・業界がサンゴ礁の自然環境や保全に前向きに取り組むようになるために、
弊サイトの勝手な「提言」や「お願い」が少しでも役に立つことが出来れば、
これほど幸福なことはありません。

ただし、ここに掲載した“お願い”は、
私・放蕩息子の個人的な考えに拠ったものに過ぎませんので、
多くの“思い違い”や“見落とし”があるものと思います。
ご覧いただいた皆様のご意見を取り入れることで、
どんどん改善・充実していきたいと考えていますので、
掲示板メールなどを通じて、是非皆さんのご意見をお寄せ下さい。

よろしくお願いします。



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