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生き物の持ち帰り方
(運搬方法)

 

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魚やエビ、カニなどの生き物を捕まえて磯採集を楽しんだら、
最後は自宅で飼える生き物を持ち帰ります。

この生き物の運搬方法が意外と難しくて、
慣れない方はしばしば、折角の生き物を全て殺してしまう事がありますから、
このページを良く読んで、
十分な準備をしておいて下さい。

 

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準備するもの
  磯採集の持ち物」で既に述べているものばかりですが、再度リストアップしておきます。
 
   
1. 密封できる容器(フタ付きバケツ等)
 
  • 釣具屋で売っているフタ付きバケツで構いません。出来れば容量の大きなものを準備して下さい。運搬の際の水量が多ければ多いほど、安定した水質で長時間の移動が可能になります。
  • 運搬する生き物の数や量が少なく、移動時間も短ければ、容量の小さなもの(2〜3L)でも生き物を運搬する事は可能です。
   
2. ウォータータンク
 
  • 「磯採集の持ち物」にある通りです。100円ショップの折り畳み式で十分です。
  • 移動時間が短ければ(数時間程度)、必要ありません。
   
3. 電池式エアポンプ
 
  • これも「磯採集の持ち物」に書いてあります。移動時間が短ければ(数時間程度)、必要ありません。
   
4. 「酸素の出る石」
 
  • 水の中に入れると化学反応で酸素を放出する「石」です。鑑賞魚店や、夏場ならホームセンターでも入手できます。釣り具店には活餌の運搬に使用する、非常に大型のものも売っています。
  • これも移動時間が短ければ(数時間程度)、必要ありません。
   
5. クーラーボックス等
 
  • 発泡スチロールのいわゆる「トロ箱」でも構いません。真夏の時期や真冬の時期などには、採集生物を入れた容器をそのまま外気に晒しておくと、移動途中で水温が急激に変化し、中の生物が皆、死んでしまいます。この急激な温度変化を防ぐには、クーラーボックスの中に入れて運ぶのが一番です。
  • クーラーボックスがなければ、100円ショップの「保冷バッグ」でも良いですし、最悪、大きなタオルや毛布で容器を包むだけでも違います。少しでも温度変化を抑えられるよう、道具を工夫してください。
  • これらの「保温道具」はあまり気がつかないと思いますが、特に長時間の移動の際には、非常に大切です。
   
   
運搬のための準備作業
  磯採集した生体をただ闇雲にバケツに入れて車で運ぶだけでは、生体を安全に運搬する事は出来ません。特に長時間の移動の際などは、車に積み込む前に、しっかりと準備をします。
 
   
1. 持ち帰る生体の選別
   
 
  • まず持ち帰る生体の選別をします。持ち帰る事が出来ない生体は採らない事が基本ですが、それでもちょっと陸上で観察してみたいとか、どんな生き物か分からない、などで、採取してバケツの中に入れておく事はあるでしょう。
  • その他にもバケツの中に入れて置いたことによって調子を崩して、弱ってしまった個体など(もちろん、そんな風にならないように気を付ける事は徹底して欲しいですが)も、移動途中で死んでしまうかもしれません。せまいバケツの中などで死んだ者が出ると、水質が一気に悪化して、全滅してしまう事もありますから、そのような事態を避けるためにも、持ち帰る生体の選別が必要です。
  • 持ち帰るものは原則として、

      1. 自宅の水槽で飼育できる事が分かっているもの
      2. 水槽内の他の生物を食べたりしないもの
      3. 元気で、輸送に耐えられそうなもの

    という条件で、輸送&飼育できる限度内の数を選びます。いくら元気で、飼育も簡単なものでも、過密な状態で輸送したり飼育したりすれば死んでしまいますから、持ち帰るものは出来るだけ少なくしましょう。

  • 具体的に、どれくらいの生き物が何時間、ということは、ケース・バイ・ケースですので、一概に言えません。ただし、500mlや2Lのペットボトルでは(時間にもよりますが)、ヤドカリの1〜2匹くらいしか持ちかえれないのではないでしょうか。やはり最低、5〜10Lくらいは入る容器が欲しいな、とは思います。
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2. 生体の仕分け
   
 
  • 水槽の中でも同じですが、持ち帰りの際にも、「相性」というものがあります。ケヤリとヤドカリを一緒にしておくとケヤリが食べられてしまうかもしれませんし、イソギンチャクと魚を一緒にしておいたら、やはり食べられてしまうかもしれません。
  • それらの条件を考えて、特に他の生き物に危害を及ぼす恐れのある者は、小型のプラケースなどを用いて、隔離しておくようにします。
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3. 移動前の換水
   
 
  • いよいよ車に積みこむ前には、生体の入った容器の水を捨てて新しい水を入れ、換水をしておきます。
  • 採集した生体は全て自然の海でさっきまで摂餌していた生体ですから、当然、ストックしておいた容器の中でも排泄をしています。容器の仲の水は既に汚れていますので、移動の直前には再度、それらを換水して、新鮮な海水を補給しておくのです。
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4. 途中換水などに使用する海水の確保
   
 
  • 特に移動が長時間に及ぶ時や、運搬する生体の数が多い時などは、途中で一度、換水出来ると安心です。また、自宅に帰った際も、一度、採集場所の海水で換水しておくと良いと思われます。
  • 生体の入った容器とは別に、折り畳みのポリタンクなどに海水を入れて、生体の容器にくっつけて置くようにします。これによって2つの容器の中の水温が同じになって、いつでも換水する事が可能になります。
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5. パッキング&車への積み込み
   
 
  • 万が一の場合に容器が倒れたりしないように、倒れても水がこぼれないように、こぼれても被害が最小限になるように、気を付けて、容器を積み込みます。
  • この時、必要があれば、「酸素の出る石」や「電池式エアポンプ」で運搬容器の中に酸素を供給するようにして下さい。
    (ただし、私の場合には、2〜3時間程度までは、10L以上の大型バケツを密封して、特に酸素供給はしていません。運搬する生体の量にもよりますが、それでも案外、平気なものです。)
  • この時にはクルマのトランクなど、温度変化が激しい場所は好ましくありません。出来れば人間の乗る室内の、シートの下の足元の場所などがよいでしょう。
    ただし、ヒーターやエアコンの吹き出し口の場所ではやはり温度変化が激しくなると思われます。そうした場所をさけ、しかも直射日光があたらない場所を捜して、生体の容器を置きます。
  • 普通のクルマであれば後部座席の足元や後部座席の上などが良いでしょう。容器の周囲をタオルや容器で囲ったり、容器ごとクーラーボックスの中に入れられれば完璧です。
   
   
自動車での移動途中の注意事項
  移動中の自動車の中も、お天気の良い春〜夏にかけては、非常に温度が上がり、海にすむ生物にとっては厳しい環境になることがあります。
下記の注意事項を良く読んで、せっかく捕まえた生体を安全に、自宅まで連れ帰りましょう。
 
   
1. 車のトランクや荷台への積み込みは避ける
   
 
  • 上でも述べましたが、クルマのトランクや荷台にはエアコンの装置がありませんので、特に夏場などは非常な高温になります。
  • 採集した生物が皆、死んでしまいますので、クーラーボックスなどの装備がない場合、車のトランクや荷台は避けた方が良いでしょう。
   
2. 途中の停車時の水温上昇に注意
   
 
  • 高速道路などで休憩のための停車中、僅かの時間と思っても、夏場などには室内温度が急上昇することがあります。特に夏場、休憩や食事などでクルマを離れる場合には、思いきって、生体の容器をクルマの外に出してしまう事も考えて下さい。車の下の日陰の部分に置いておけば、車の中に置いておくよりも涼しい環境をキープ出来ます。
  • 逆に冬場などは外に出しておくと水温が下がりすぎる事もありますから、これはその時の気温などの条件によって、とにかく温度変化が少なくなるよう、最善の方法を考えて下さい。
   
2. 直射日光は避ける
   
 
  • 1や2と同じ理由で、直射日光は厳禁です。とにかく日光があたってしまえば、水温が上がります。生体にとって危険な環境です。日光浴などしなくて良いので、絶対に陽の当らない場所に置くようにしてください。
   
4. 移動が長時間に及ぶ時には途中で換水
   
 
  • 特に移動が長時間に及ぶ時や、運搬する生体の数が多い時などは、途中で一度、換水するようにします。飼育生体の数やその時の条件にもよりますので、「何時間ごとに」とは言えませんが、生体を入れている海水が白く濁るようなら、換水した方が良いでしょう。
  • またの換水の回数も、一概に何回、とは言いきれませんので、生体の様子を見ながら、調整が必要と思います。
   
   
自宅到着後の作業
  自宅に到着したら出来るだけ早く荷を解いて、採集した生物を水槽に入れるようにします。狭い運搬容器の中に放置しておけば、水質が悪化する一方だからです。
かといって、採集した生体をそのまま水槽の中に放り込んでしまえば、余りに急激な環境変化でショック死してしまうかもしれません。以下の順に従って、ショップで魚を購入した時と同様、温度合わせ&水合わせを行います。
 
   
1. 出来ればまず換水
   
 
  • 途中の換水用の海水があれば、その海水で一度換水すると良いと思います。上にも書きましたが、移動に使用した容器の中の海水は、移動中の生体の排泄物によって既に汚れています。これから徐々に水槽の水と「水合わせ」をしていくわけですが、その前に一度、棲息場所と同じ水質の、綺麗な水にしておくと、その後の「合わせ」をゆっくりと行う事が出来ます。
  • ただし、生体の入ったバケツとウォータータンクを別の場所に積んだ、等で、生体の入ったバケツの水温と持ち帰った海水温が大きく異なる場合などには、いきなり水を混ぜる事は出来ません。必ず温度が合っている事を確認してから行って下さい。
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2. 温度合わせ
   
 
  • ここから先はショップで購入した場合も、磯で採集した場合も、同じ作業になります。自然の海と自宅の水槽とでは、たいていの場合、水温が大きく異なりますから、そのままポチャンと水槽の中に放したら、急激な温度変化によるショックで、魚は死んでしまいます。
    そうならないように、時間をかけて温度を合わせていくのです。
  • ショップで購入した魚の場合は、ショップの袋のまま、水槽に浮かべて30分程放置しますが、採集魚の場合には袋に入っていませんので、1L程度の小型のプラケース(小型のタッパーでも可)に魚を入れて、水槽に浮かべて置けばよいでしょう。
    袋で温度合わせする場合よりも少し長めの時間を掛けて、ゆっくりと温度合わせします。
    またこの時には、採集魚がプラケースから飛び出したりしないように、フタも閉めておくとよいと思います。
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3. 水合わせ
   
 
  • これもショップで魚を購入した場合と同様です。具体的な手順は、「海底三百ミリメートル・実践編[5]生体の導入」を参照してください。
    自然の海と水槽では、水温が異なるだけでなく、phなど、様々な水質も異なりますので、時間をかけて合わせていきます。
  • 特にエビなどはこの作業を丁寧にやらないと、水槽に入れたとたん、ショック死することがあります。気をつけて下さい。
    ↓
4. 生体の導入と観察
   
 
  • 温度合わせ、水合わせが終わったら、採集した生体をゆっくりと水槽の中に放して下さい。
    その際はなるべく網を使わず、小さな容器や巣でなどで行う方がベターです。
  • 生体がショックなどを起こしていない事を確認したら、いよいよ、採集して来た生物の「飼育がスタートします。
  • なお、採集生物を水槽に放す時、水槽にいる先住者に食べられてしまう事があります。
    そうならないように、事前の生体の選別を慎重に行うと共に、生体を水槽に放すのは、魚等が寝ている夜、暗くなってからの方が良いと思います。
    それから、特にクマノミなどは、泳いでいるものを餌だと思います。彼らに襲われないためには、水槽の上からポチャンッ!と入れるのではなくて、生体を小型ケースなどに入れたまま、水槽の底に置き、小型ケースをゆっくりと引き抜けば良いでしょう。
   

 

以上が採集した生体の持ち帰り方です。
この後は「
海底三百ミリメートル」などを参考にしながら、
ご自宅での生体の飼育に取り組んでください。

 

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