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海底三百ミリメートル・実践編 [6]
その後の日常管理

2004.02.11UP/2008.03.01部分修正

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濾過バクテリアが十分に繁殖し、
生体を丁寧に導入したら、
海水魚水槽は一応の完成です。
ただ、一度水槽をセットして、生体を入れてしまえば、
その後は何もしなくてよい、
というものではありません。
相手は生き物ですから、毎日の世話、日常管理が必要です。
 その日常管理についてまとめます。

 

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◇ ◆ ◇ 日常管理のポイント ◇ ◆ ◇

一番最初にも書いたことですが、小型水槽を上手にキープするためのポイントは、小型水槽のデメリットを補ってやることにあります。繰り返しになりますが、
      (1).温度変化を最小限に
      (2).水質変化を最小限に
      (3).縄張り争いを起こさせないように
ということになります。

(1) 温度変化を最小限にするために
 
  • (1).の温度変化については、出来れば毎日最低、1回は、水温のチェックをして下さい。
    前日と当日で2度以上も水温が変化している環境は、魚にとって良い環境ではありません。
    水槽を移動して、なるべく涼しくて、温度変化のない場所に置きなおします。

  • 注意が必要なのは春や秋など、日中の気温の変化が激しい時です。
    例えば、朝方の温度は15℃、日中の温度が25℃の日に、ヒーター&サーモの温度設定を20℃にしておくと、夜〜午前中に掛けての水温は20℃で一定ですが、午後〜夕方に掛けては25℃まで水温が上がってしまう、ということがあります。
    このような時には初めから、水温設定を25℃とか、27℃とかにしておいて下さい。
    その分、余計にヒーターが働き、電気代が掛かるわけですが、水温は一定になりますので、魚にとっては良い環境になります。

  • また、夏場など、水温が上がりすぎる事が良くあります。水温の目安は最高でも29℃、30℃を越えると、イソギンチャクに悪影響が出ます。その場合には、ライトを水槽から遠ざけたり、小型扇風機を購入して水面にか風を当てるなどして、水温を下げてください。扇風機の風を当てるだけでも、2〜3℃、水温を下げる効果があります。
    もちろん、一日中エアコンが効いた部屋に置いておけるのであれば、それが最も理想的です。

   
(2) 水質変化を最小限にするために
 
  • ポイントは3つあります。
         1.控えめな給餌
         2.こまめな換水
         3.こまめな足し水
    です。

  • 餌に付いては、できるだけ控えてください。1日1回〜2回、なるべく残り餌が出ないように、 粒餌やフレークのひとつひとつを、魚に手渡しするようなつもりで与えれば良いと思います。
    小型のクマノミであれば1日に数粒の人工餌が食べられれば、十分ではないでしょうか。

  • 逆に餌の与え過ぎは、水質悪化に繋がるだけでなく、直接、魚の体調を崩します。
    自然の海では、毎日必ず餌が食べられるなどということはないので、水槽の中に入った後でも、魚たちは餌が与えられれば与えられるだけ、食べてしまおうとします。
    結果、食べ過ぎとなり、胃腸を壊し、拒食となったり、栄養吸収が出来なくなったりして、逆に痩せ細って死んでしまうからです。
    「まだ魚が欲しがっているから」といって、餌を与え続けるのは、魚を殺すことになりますから、魚が欲しがっているうちに止めることが勇気が必要です。

  • 換水については、30センチ水槽ですから、そんなに大変ではないはずです。出来るだけこまめにやってください。
    水槽に生体を導入したら、その後は出来れば毎週1回、2L程度(水槽水量の1/5)の水を、換水をするのが理想です。

  • なお、今回の水槽には、「還元濾過」を組み込んでいるので、「硝化濾過」だけの場合に比べて、硝酸塩の蓄積スピードは遅いはずです。それでも「還元濾過」がどれだけの効力を持つかは、ケース・バイ・ケースですので、安心は出来ません。
    こまめに換水するだけではなくて、出来れば、時々は試薬で硝酸塩の値をチェックして、硝酸塩が大量に溜まるようなら、1/2くらい(と言っても5Lですが)の大量換水をして下さい。
    それでも毎月、大量換水が必要なようなら、それは餌のやり過ぎです。生体の数と餌の量を減らしてください。

  • 足し水に付いては、「濾過バクテリアの繁殖」の項で述べましたので、そちらを参照してください。
    足し水のタイミングは、水が蒸発するスピードによりますので、「何日に一度」とか、「何週間に一度」と、簡単に決めることは出来ません。水が蒸発する量をこまめに観察して、少しずつ足し水して下さい。
    30センチ水槽の水量が10L程度であることを考えると、1回の足し水が1Lを超えるようでは良くないと思います。そこまで行かないうちに、こまめに足し水をしてください。

   
(3) 縄張り争いを起こさせないために
 
  • 縄張り争いについては、小型水槽では、もし一度起これば、解消するのは困難でしょう。
    「起こさせないために」というのは、最初の生体選び(混泳のさせ方)が全てで、その後はもし万が一縄張り争いが起きた時に、どれだけ早く気付いて、縄張り争いをする魚を水槽から出すことが出来るか、ということになると思います。

  • 日中から、夜から、機会のある度に水槽を良く観察して、縄張り争いが起きているようなら、すぐに混泳を見直して下さい。
    いじめられている生体は、夜、特定の“ねぐら”で眠ることができなくて、水槽の中をぼーっとしながら、水流に流されてふらふらしていることがあります。まず、いじめによるストレスを受けていると思われます。

  • このような場合には、いじめている方か、いじめられている方か、どちらか一方を水槽から取り出しますが、その生体は、必ず、海水魚ショップに引き取ってもらうようにして下さい。
    逆にそれができなければ、殺してください。決して近所の海に流さないで下さい。
    遠い外国や南の海から飛行機で運ばれてきた魚やその他の生き物を、本州近辺の海に放すことは、本州近辺の生態系を壊す、自然破壊に他なりません。
    「自分の手で殺すのは可哀想だから」と、飼育生物を自然の中に逃がすのは、“飼い主”として最も無責任な行為です。それならは自分の手で殺してください。それが生き物を飼う者としての、最低限の責任のとり方です。

 

◇ ◆ ◇ その他のメンテナンス ◇ ◆ ◇

上記のポイントの他に、様々なタイミングで行うメンテナンスがあります。

(1) 照明の点灯と消灯
 
  • 水槽照明を点けたり消したりすることも、大切な日常の世話であり、メンテナンスです。
    魚にも、エビやヤドカリや、その他の水槽内の生体にも、毎日の定期的な照明の点灯&消灯のリズムが必要です。
    自然の生き物は人間よりもずっと適応力が低いので、明るくなる時間、暗くなる時間が、一定せず、毎日変わっているようですと、ストレスがたまって病気になってしまいます。
    出来るだけ決まった時間にライトを点け、決まった時間に消すことを習慣づけて下さい。毎日するのが大変なら、24時間タイマーを使うと非常に便利です。

  • 仕事で帰りが遅い人などは、夜、ライトを点けておきたいこともあるでしょう。そのような時は最初から点灯時間を遅くセットし、その分、消灯時間も遅くしておきます。
    たとえば朝10時に点灯、夜11時に消灯、というようなリズムです。

   
(2) 毎日の給餌
 
  • 餌やりは一番楽しい時間かと思います。水槽に慣れて、餌がもらえるのが分かるようになると、餌をあげるために水槽に近づくだけで、魚たちが寄ってきます。
    ただし、上にも書いたように、与える餌は最少限にして下さい。一度に沢山与えれば、魚はお腹を壊します。

  • 普通は朝晩2回くらい、少量ずつで良いでしょう。魚の種類や大きさ、状態によって調整して下さい。具体的には何とも言えません。「少しずつ」を基本にして、餌をあげているうちに自然に、適量が分かってくると思います。

  • それから、クマノミに与える餌の中に、「ラクトフェリン」という成分(たんぱく質の一種)を含んだ餌を混ぜておくと、白点病などの感染症の予防に効果的だといわれていますのでお奨めします。具体的な商品名としては、日本動物薬品から販売されている「メディフィッシュ」や「メディマリン」などという商品になります。
    クマノミの健康維持のため、クマノミに与える餌の中には、これらの商品を混ぜておくと良いでしょう。「メディフィッシュ」は「海水魚用」ではありませんが、これだけを与えるのでなければ、「海水魚用」でなくても構いません。

  • なお、イソギンチャクの餌は、1〜2週間に1回程度、小さめのアサリの身、ひとつ程度の量で十分です。イソギンチャクは体内に共生している褐虫藻という藻類が光合成によって作り出す養分を吸収して成長するからです。
    イソギンチャクへの給餌も魚への給餌と同じで、量が多すぎるとイソギンチャクの健康を損う原因になります。餌の与えすぎにご注意ください。

   
(3) 定期的な部分換水
 
  • 今回の水槽では「テトラ・ナイトレイトマイナス」を使い、還元濾過を組み込んでいますので、酸化濾過(好気濾過)のみの場合よりも、硝酸塩の蓄積は少ないはずです。
    ただし還元濾過の効力は水槽によっても異なりますし、たとえ硝酸塩の蓄積が無くても、人工海水中の微量成分を普及するために、定期的な部分換水を行う事が望まれます。

  • 換水の頻度、量については、上述のように、「毎週1回、2L程度(水槽水量の1/5)」が理想でしょう。ただし、それ以下でも大丈夫だろうと思いますし、実際に硝酸塩の値をモニターしながら、それぞれの水槽の状況に合わせて、調整していただきたいと思います。
    あらかじめ10Lくらいの人工海水を作っておいて、2Lペットボトルにでも小分けしておくと便利でしょう。

  • なお、換水の前には必ず、新しい海水の温度を、飼育水の温度に合わせておいてください。この温度合わせを怠ると、水温の急変によって生体が死にます。

  • また、硝酸塩が蓄積しすぎた場合には、1/2程度の大量換水を行う事も上述の通りです。
    ただし、頻繁な大量換水は水質を不安定にしますので、あまり好ましくありません。大量換水は出来るだけ控えるのが基本だと言う事は、理解しておいていただきたいと思います。

   
(4) ガラス面の苔掃除
 
  • これも「濾過バクテリアの繁殖」の項で触れています。
    苔自体は無害で、苔が生えても魚には害はありません。しかし水槽は鑑賞用水槽ですから、あまりに苔が生えていては美しくありません。時々、掃除してあげると良いでしょう。

  • 掃除する時には、ガラス面からこすりとった苔を、出来るだけ飼育水の中に戻さずに、水槽の外に捨てられるように留意してください。完全には難しいと思いますが、換水の前に苔掃除をすれば、換水すると同時に若干の苔を、水槽の外に捨てることが出来ます。

  • 苔を綺麗にする一番簡単なのは「シッタカ」などの「苔取り貝」を水槽の中に入れておくことで、やはり完全には苔取りはできませんが、実用鑑賞上、あまり気にならない程度まで、苔を減らすことが出来ます。
    「シッタカ」は海水魚ショップで購入すると@100〜300円と高価ですが、磯で自分で簡単に採集できます。時に鮮魚店でも売っていて、1パック(10匹くらい?)で300円とか、500円とか、安価です。入手方法は工夫してみてください。

   
(5) 「OT-45」のフィルターバックの交換
 
  • フィルターセットの取扱説明書には「2〜3週間で交換」と書いてありますが、それはフィルターバッグの中の活性炭の有効期限がその程度、ということです。
    バッグのウールについた濾過バクテリアが働くのはむしろ1ヶ月くらい後からで、経験上、2〜3ヶ月は十分に使えますし、むしろそれくらい経った方が、生物濾過能力は上がっていると思います。

  • フィルターバックが茶色になるのは、そこに硝化細菌が繁殖しているためで、むしろ喜ばしいことです。白いままでは、いつまで経っても、硝化濾過が出来ていないことになりますので、フィルターが茶色になったからと言って、すぐ交換してはいけません。

  • ただし、フィルターバックが余りにもヘドロ(活性汚泥)だらけになり、目詰まりを起こしているようなら、バックの交換が必要になります。
    そのタイミングがどれくらいかは、一概に言えません。ただ、私の過去の経験からは、短くて3ヶ月くらい、長ければ半年くらい、フィルターバックはそのままでした。
    まあ、時々見て、あまりひどく目詰まりしているようなら、交換すれば良いでしょう。

   
(6) 底面濾過の掃除
 
  • フィルターバックにヘドロ(=活性汚泥)が溜まるのと同様、それ以上に、底面濾過装置=底砂にも、ヘドロが溜まっているはずです。

  • 硝化濾過のみの場合には、「底砂クリーナー」等を用いて、換水の都度、少しずつ、ヘドロを抜いてやれば良いのですが、今回の水槽には「テトラ・ナイトレイトマイナス」が、底砂の中に埋まっていますので、余りいじることが出来ません。
    「クリーナー」を使う場合でも、底砂の表面側を軽くクリーニングする程度に留めて、「ナイトレイトマイナス」を掘り出したりしないように気を付けてください。
    ただし、水槽セット時のまま、底砂を放置しておくと、数ヶ月のうちには必ず、底砂の目詰まりを起こし、濾過能力が低下しますので、最低、月に1度くらいの頻度で、底砂のクリーニングをした方が良いでしょう。

  • このような状態ですと半年〜1年の間には、底砂の間にヘドロが沢山溜まると思います。半年〜1年の間には、「ナイトレイトマイナス」も溶けてなくなっているはずですので、そうしたら大掃除です。
    いったん生体を水槽から全部出して、底砂を掻き回して、ヘドロを抜いてください。ただし、どんなに短くても、半年より短い間隔で大掃除をする必要はないと思います。もし半年以内に大掃除をしなければならないほどヘドロが溜まったとしたら、おそらく餌のやり過ぎです。普通は大掃除は1年に一度程度、気が向いて暇な時にやれば十分です。小型水槽ですから、大掃除と言ってもすぐに終わるでしょう。

  • 逆に、1年のうちに3度も4度も、底砂を掘り返して大掃除をすると、その度にバクテリアが減りますから、飼育生体は却って調子を落とします。水槽は汚れているくらいでちょうど良い。くらいに考えておいてください。

なお、当ページの公開後、2006年〜2007年ごろまでに、当ページでご紹介していますテトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」は販売終了となった模様で、2008年03月現在では、一部の店舗に店頭在庫品として残っているもの以外には、入手が困難な状況となっています。その後、テトラ社からは、同じ「ナイトレイトマイナス」という商品名で液体タイプの製品が販売されていますが、当ページでのセッティングは、固形タイプの「通性嫌気性従属栄養細菌の餌(還元濾過細菌の餌)」を想定したものです。
当方では、具体的な製品名や商品名の全てを把握してはおりませんが、現在では、テトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」以外にも、複数のメーカーから、同様の機能を持つ「還元濾過細菌の餌」が幅広く販売されており、実際の使用に何の不都合もありません。店頭においてテトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」が入手できない場合には、それらの
代替商品のご購入/ご使用をお願いします

テトラ「ナイトレイトマイナス(固形タイプ)」販売終了のお知らせを怠りましたために、これまでに何名かの方から、「ナイトレイトマイナスが入手できないのだが…。」というお問合せをいただきました。弊サイトの不手際のためにご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます。(2008.03.01)

 

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日常のメンテナンスは以上の通りです。

この実践編の[1]から[6]の説明の中には、
小型水槽でクマノミを飼育するための基本的なノウハウが揃っており、
このセットでも十分、数年間の飼育が可能だとは思います。

ただし、このような小型水槽での飼育は、やはり魚にとって決して理想的な環境とは言えません。
この小型水槽での飼育はひとつの「お試し期間」のようなものと考えて、
海水魚飼育に関する基本的な知識やスキルを手に入れたなら、
次には是非、より大きな水槽での飼育にステップアップしていただきたいと思います。

なお、最後に、クマノミとイソギンチャクの飼育、その他に関して、
良くある質問をまとめましたので、
「実践編[7]FAQ よくある質問」もご覧いただいて、飼育を楽しんで下さい。

 

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